伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

善意の殺人

2006-08-05 22:41:27 | 小説
 訳者による巻末の解説によれば「前代未聞の法廷ミステリ」「予期できないような結末」の推理小説です。
 形としては法廷ものになっていますが、実際には法廷で進行する冒頭陳述に膨大な捜査過程の回想が組み込まれ、回想部分で話を進めています。法廷でのやりとりで新たな展開というところはありません。実質的には探偵ものの推理小説に近い感じです。

 被告人が誰かが終盤まで明らかにされない点とラストのどんでん返しは、「前代未聞の法廷ミステリ」ではありますが、終盤に明らかにされる被告人は特に意外感もなく、評決に至るまでの進行もさして意外なところはなく、はっきりいって犯人の推理そのものについては平凡なできだと思います。
 最後のどんでん返しは、確かに「予期できないような結末」ですが、これは法廷ものとしては反則に属するものだと思います。
 最後にビックリさせられること自体は認めますが、本筋の部分でドキドキワクワクの展開もなく推理としてもそれほどおもしろくもないので、推理小説ないしリーガルミステリーとして高い点は私にはつけられません。
 文章も大仰で持って回った感じで日本語としてわかりにくく、いまどきの文章としては読みにくい部類に属します。もう少しこなれた訳にしてほしいと思いました。


原題:Excellent Intention
リチャード・ハル 訳:森英俊
原書房 2006年8月1日発行 (原書はなんと1938年)
コメント (1)
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