地球とは「移動の門」でつながった別世界を舞台に、オモワ帝国の女帝の姪で強い魔力を持つ少女タラ・ダンカンが、悪魔と結んだ魔術師(サングラーヴ族)のマジスターと戦うファンタジーです。
2巻の終わりで唐突にタラ・ダンカンの争奪のため別世界の人間(魔術師)の帝国オモワ帝国が地球の人間たちに宣戦布告するというとんでもない展開になっていましたが、その話は「虚構の戦争」(シミュレーションということでしょう)をしてみてその勝負でタラ・ダンカンの居住場所を決めるということで3巻の始まりまでに終わってしまっています。はっきりいって連続ドラマで次回につなげるためによくやるやつ。3巻も終わりで突然タラ・ダンカンが行方不明になりますが、きっと同じことでしょう。こういうやり方をされると、かえって読む気が薄れますね。
3巻の冒頭はそのシミュレーション戦争の時の魔法の衝撃でタラ・ダンカンの記憶が失われたという設定で始まりますが、これも第4章まで(上巻66頁まで)で何の問題もなく記憶が戻りその後も記憶喪失の影響とかは出てきません。2巻の発売から1年ほどたっているので記憶を失ったタラにこれまでのことを説明する形をとって読者にこれまでのことを説明するためとしか思えません。
ストーリーは、1巻、2巻に比べて少し展開のテンポにブレーキがかかったように感じました。1巻、2巻はとんでもなく展開が速くてなかなかついて行けなかったというか、流れがわからなくなってアレッと思って読み返すこともしばしばだったので、これくらいでようやくスッと話の流れについて行けるテンポ。作者の意識が少しストーリー展開の速さ重視から登場人物の造形に比重を移したかなと感じます。
3巻ではタラ・ダンカンも友人たちもティーンエイジャーになり、タラも帝国の世継ぎとして責任を負う場面が出てきますし、恋愛関係も出てきます。日本語版のイラストは原書に比べて異様に幼く(日本語版の3巻下巻ではビキニスタイルの戦闘服だったりロリコン色を強めていますが)成長感がありませんけど。
深刻になって読んでもハッピーでなくなったハリー・ポッターから離れた10代読者の受け皿となれるかは、ディテール、特に人物・人間関係の綾がどこまで書き込めるかによるでしょう。
ただ、今さらどうにもならないでしょうけど、魔法をかけるときの呪文の訳(例えば「レパリュス(ちりょうする)のまじないによって、傷が消え、痛みがおさまりますように!」)なんとかなりませんかねえ。ちょっと読んでて恥ずかしい。まあ、もともと大人が読むのには気恥ずかしい本ですけど。
原題:TARA DUNCAN ,LE SCEPTRE MAUDIT
ソフィー・オドゥワン=マミコニアン 訳:山本知子
メディアファクトリー 2006年8月4日発行 (原書は2005年)
2巻の終わりで唐突にタラ・ダンカンの争奪のため別世界の人間(魔術師)の帝国オモワ帝国が地球の人間たちに宣戦布告するというとんでもない展開になっていましたが、その話は「虚構の戦争」(シミュレーションということでしょう)をしてみてその勝負でタラ・ダンカンの居住場所を決めるということで3巻の始まりまでに終わってしまっています。はっきりいって連続ドラマで次回につなげるためによくやるやつ。3巻も終わりで突然タラ・ダンカンが行方不明になりますが、きっと同じことでしょう。こういうやり方をされると、かえって読む気が薄れますね。
3巻の冒頭はそのシミュレーション戦争の時の魔法の衝撃でタラ・ダンカンの記憶が失われたという設定で始まりますが、これも第4章まで(上巻66頁まで)で何の問題もなく記憶が戻りその後も記憶喪失の影響とかは出てきません。2巻の発売から1年ほどたっているので記憶を失ったタラにこれまでのことを説明する形をとって読者にこれまでのことを説明するためとしか思えません。
ストーリーは、1巻、2巻に比べて少し展開のテンポにブレーキがかかったように感じました。1巻、2巻はとんでもなく展開が速くてなかなかついて行けなかったというか、流れがわからなくなってアレッと思って読み返すこともしばしばだったので、これくらいでようやくスッと話の流れについて行けるテンポ。作者の意識が少しストーリー展開の速さ重視から登場人物の造形に比重を移したかなと感じます。
3巻ではタラ・ダンカンも友人たちもティーンエイジャーになり、タラも帝国の世継ぎとして責任を負う場面が出てきますし、恋愛関係も出てきます。日本語版のイラストは原書に比べて異様に幼く(日本語版の3巻下巻ではビキニスタイルの戦闘服だったりロリコン色を強めていますが)成長感がありませんけど。
深刻になって読んでもハッピーでなくなったハリー・ポッターから離れた10代読者の受け皿となれるかは、ディテール、特に人物・人間関係の綾がどこまで書き込めるかによるでしょう。
ただ、今さらどうにもならないでしょうけど、魔法をかけるときの呪文の訳(例えば「レパリュス(ちりょうする)のまじないによって、傷が消え、痛みがおさまりますように!」)なんとかなりませんかねえ。ちょっと読んでて恥ずかしい。まあ、もともと大人が読むのには気恥ずかしい本ですけど。
原題:TARA DUNCAN ,LE SCEPTRE MAUDIT
ソフィー・オドゥワン=マミコニアン 訳:山本知子
メディアファクトリー 2006年8月4日発行 (原書は2005年)