騙されて引っ張り込まれた合コンで睡眠薬を飲まされて集団レイプされ正体不明の生物を孕みHIV感染の可能性も告知された主人公が、恋人に告げずに別れることを決意し犯人への復讐を決意するが、正体不明の青年の示唆を受けながら恨みを克服し恋人と生きようと決意するに至る小説。
正体不明の青年の「鳥の影から逃げないで。逃げたら、一番大切なものを失うから。その眼で鳥の影の正体を見ることができれば、影は消える。」(54頁)がキーワードとなっています。ストーリーの中では鳥の影は加害者のこと、加害者の力を過大視するなということのように読めましたが、エンドで「心の弱さや恐怖」(173頁)、「鳥の影は恐怖に駆られた自分の弱い心が作り出す、憎しみと破壊を望むもう一人の自分」(174頁)とされています。
加害者を憎み復讐で自分の人生を費やすより自分の人生を前向きに生きようというスタンスは、理解できますし、現実的とも思えます。弁護士としては、その辺ちょっと複雑な思いはありますけど。
でも、同時に、レイプ犯のイツキが逃げ延びるのもなにか割り切れない気持ちが残ります。
また、一緒に被害を受けた被害者がナイフを振りかざしてイツキに襲いかかったときの主人公の対応は、今ひとつ被害者が持つ復讐心への共感を感じさせません。
この場面に限らず主人公の態度は、終始無感動というかさめた感じですが。同時にその意味で「前向き」って感じもしませんが。
もっとも、イツキが逃げ延びるのが気に喰わんといっても、もろに勧善懲悪的なお話だとそれはそれで、ファンタジーならともかく、小説としてはおもしろくないとも思ってしまうわけで、読者としてわがままなだけともいえますけど。
桜井亜美 幻冬舎文庫 2006年8月5日発行 (単行本は2004年)
正体不明の青年の「鳥の影から逃げないで。逃げたら、一番大切なものを失うから。その眼で鳥の影の正体を見ることができれば、影は消える。」(54頁)がキーワードとなっています。ストーリーの中では鳥の影は加害者のこと、加害者の力を過大視するなということのように読めましたが、エンドで「心の弱さや恐怖」(173頁)、「鳥の影は恐怖に駆られた自分の弱い心が作り出す、憎しみと破壊を望むもう一人の自分」(174頁)とされています。
加害者を憎み復讐で自分の人生を費やすより自分の人生を前向きに生きようというスタンスは、理解できますし、現実的とも思えます。弁護士としては、その辺ちょっと複雑な思いはありますけど。
でも、同時に、レイプ犯のイツキが逃げ延びるのもなにか割り切れない気持ちが残ります。
また、一緒に被害を受けた被害者がナイフを振りかざしてイツキに襲いかかったときの主人公の対応は、今ひとつ被害者が持つ復讐心への共感を感じさせません。
この場面に限らず主人公の態度は、終始無感動というかさめた感じですが。同時にその意味で「前向き」って感じもしませんが。
もっとも、イツキが逃げ延びるのが気に喰わんといっても、もろに勧善懲悪的なお話だとそれはそれで、ファンタジーならともかく、小説としてはおもしろくないとも思ってしまうわけで、読者としてわがままなだけともいえますけど。
桜井亜美 幻冬舎文庫 2006年8月5日発行 (単行本は2004年)