各地の気候・風土と交易路・交易関係からアジア史の全体像を考察した本です。
アジアを南側から湿潤アジア(モンスーン地帯)、乾燥アジア(砂漠地帯)、亜湿潤アジア(森林地帯)に3分し、湿潤アジアを東アジア農耕文化圏(中国)と南アジア農耕文化圏(インド)とその南側の海洋アジアに分け、乾燥アジアを北アジア遊牧文化圏(ステップ地帯)と西アジアオアシス文化圏(砂漠地帯)に分け、北方の森林地帯(シベリア)の狩猟(特に高級奢侈品であったテン皮)を含めた6つの文化圏での富の蓄積と交換を基に歴史の展開を論じています。各国史のレベルでも、麦の中国(北部)と米の中国(南部)、麦のインド(インダス川流域)と米のインド(ガンジス川流域)と綿のインド(デカン高原)の対立と稲作地域、貿易ルート・港を支配下におくことでの歴史展開を重視しています。教科書にありがちな政治史的把握ではなく、経済史中心の把握ということになります。
中央アジアの交易ルートを支配していたことが、イスラム教の浸透やトルコ民族の隆盛に果たした役割なども論じられています。
著者が中央アジア史専攻ということから、前近代まではヨーロッパ文明などたいしたことはなかった、だいたいギリシャやローマを西欧文明の始まりと位置付けるのはおかしい(ギリシャ・ローマは西欧ではない、地中海は前近代はアジアの海・アフリカの海だった)、ギリシャのポリスというのも特別ではなく西アジアのオアシス国家と同じとか、アジアに肩入れする表現が目に付きますが、表現はさておき、言っている内容はうなづける点が多いと思います。
イスラム文明の発展も、イスラムが寛容・柔軟に各地の文化・伝統を取り込んでいったためとする指摘も、特にいまどきは大事な指摘と感じます。
この本は、1971年に書かれたものだそうですが、言葉遣いが少し古い点を除けば、今読んでもあまり違和感なく、アジア史の大きな流れについて考える材料を与えてくれると思います。

松田壽男
岩波現代文庫 2006年7月14日発行
(日本放送出版協会で1971年9月刊行)
アジアを南側から湿潤アジア(モンスーン地帯)、乾燥アジア(砂漠地帯)、亜湿潤アジア(森林地帯)に3分し、湿潤アジアを東アジア農耕文化圏(中国)と南アジア農耕文化圏(インド)とその南側の海洋アジアに分け、乾燥アジアを北アジア遊牧文化圏(ステップ地帯)と西アジアオアシス文化圏(砂漠地帯)に分け、北方の森林地帯(シベリア)の狩猟(特に高級奢侈品であったテン皮)を含めた6つの文化圏での富の蓄積と交換を基に歴史の展開を論じています。各国史のレベルでも、麦の中国(北部)と米の中国(南部)、麦のインド(インダス川流域)と米のインド(ガンジス川流域)と綿のインド(デカン高原)の対立と稲作地域、貿易ルート・港を支配下におくことでの歴史展開を重視しています。教科書にありがちな政治史的把握ではなく、経済史中心の把握ということになります。
中央アジアの交易ルートを支配していたことが、イスラム教の浸透やトルコ民族の隆盛に果たした役割なども論じられています。
著者が中央アジア史専攻ということから、前近代まではヨーロッパ文明などたいしたことはなかった、だいたいギリシャやローマを西欧文明の始まりと位置付けるのはおかしい(ギリシャ・ローマは西欧ではない、地中海は前近代はアジアの海・アフリカの海だった)、ギリシャのポリスというのも特別ではなく西アジアのオアシス国家と同じとか、アジアに肩入れする表現が目に付きますが、表現はさておき、言っている内容はうなづける点が多いと思います。
イスラム文明の発展も、イスラムが寛容・柔軟に各地の文化・伝統を取り込んでいったためとする指摘も、特にいまどきは大事な指摘と感じます。
この本は、1971年に書かれたものだそうですが、言葉遣いが少し古い点を除けば、今読んでもあまり違和感なく、アジア史の大きな流れについて考える材料を与えてくれると思います。

松田壽男
岩波現代文庫 2006年7月14日発行
(日本放送出版協会で1971年9月刊行)