警察庁が開発したDNA解析・検索システムにより容易に犯人を特定・検挙できるようになった近未来の日本で、それにもかかわらず現場に残されたDNAから犯人がまったく浮かび上がらない連続殺人事件が起こり、同一犯による新たな犯行と目される事件の現場に残された毛髪の解析結果がシステム開発担当者神楽を指し示し、驚愕した神楽が逃走しながらその謎に迫るというミステリー小説。
前半から、科学とデータのみを信じ管理社会の構築に突き進む神楽龍平と密室で絵を描き続けるリュウの2重人格、神楽の生い立ちに言及され、神楽とリュウを媒介する少女スズランを度々登場させ、神楽の逃走中に出会うチクシ・サソリののどかさも併せ、神楽の人間性の描写に相当な力が注がれています。そのあたりの遊びというか含みが意外に読みどころかもしれません。
ただ、スズラン、自動改札で切符はどうしたんだろう。スズランの正体についてはわりとすぐ見当がついてしまうだけに、そこがずっと気になっていましたが、それについては謎解きなしでした。あと防犯カメラの偽装工作をしたのはリュウというスズランの言葉(222ページ)と志賀の謎解き(423ページ)のズレ。スズランの容姿と実像のズレも、リュウの目にはスズランがそう見えていたのひと言(423ページ)では納得できません。スズランを登場させることで神楽の人物描写を深め、柔らかさを出せたメリットと説明にいくつかの破綻を生じさせたデメリット、どちらを重く見るか、好みの分かれるところかなと思います。
東野圭吾 幻冬舎 2010年6月30日発行
映画についての感想記事は「映画な週末」の2013年3月20日の記事で紹介しています。
前半から、科学とデータのみを信じ管理社会の構築に突き進む神楽龍平と密室で絵を描き続けるリュウの2重人格、神楽の生い立ちに言及され、神楽とリュウを媒介する少女スズランを度々登場させ、神楽の逃走中に出会うチクシ・サソリののどかさも併せ、神楽の人間性の描写に相当な力が注がれています。そのあたりの遊びというか含みが意外に読みどころかもしれません。
ただ、スズラン、自動改札で切符はどうしたんだろう。スズランの正体についてはわりとすぐ見当がついてしまうだけに、そこがずっと気になっていましたが、それについては謎解きなしでした。あと防犯カメラの偽装工作をしたのはリュウというスズランの言葉(222ページ)と志賀の謎解き(423ページ)のズレ。スズランの容姿と実像のズレも、リュウの目にはスズランがそう見えていたのひと言(423ページ)では納得できません。スズランを登場させることで神楽の人物描写を深め、柔らかさを出せたメリットと説明にいくつかの破綻を生じさせたデメリット、どちらを重く見るか、好みの分かれるところかなと思います。
東野圭吾 幻冬舎 2010年6月30日発行
映画についての感想記事は「映画な週末」の2013年3月20日の記事で紹介しています。