
「稲盛『哲学』と聖書の思想」第21回です。
稲盛哲学の中心的なところは、前回までに述べたと思います。
今回より、付加的なところを若干のべてみます。
その一つは、稲盛さんの成功に関する考え方です。
まず、人生には浮き沈みがあります。これに関して稲盛さんは次のように捉えておられます。
~~人生では幸運に恵まれることも、災難に遭うこともある。
だがこれは共に、創造主が与えてくれる試練である。
これらに如何に対処するかによって、人生は更に大きく変化していく。
対処のしようによって、よい方にも悪い方にも変化する~~と。

<成功という試練への対応>
幸運に恵まれると人は成功します。
これも試練だとはどういうことでしょうか。
稲盛さんは、こう考えます。
~~成功は、物欲を肥大させ、人を「欲のかたまりのままもがく」ようにもさせうる、と。
こう言うとお気づきでしょうが、これは「欲望は自然なままでは膨張する本性をもつ」という、仏教でいう煩悩の知識が背景になっていますよね。

<成功を当然と思う>
だが、稲盛さんはさらに、成功には次のような危険もあると述べています。
~~成功は、自分が努力して得たものだから当然と思う。
すると、もっと幸運であってもよいはずだ、もっと成功してもよいはずだ、と欲望が肥大していく。
すると、謙虚さを忘れ、傲慢になっていく。
地味な努力を怠っていく。
しかし、成功をもたらしたのは、その人の謙虚さと地味な努力でだったのである。これをしないと、すべてによかれという宇宙の意識と同調しなくなってしまう。
その結果自然に衰退、没落する~と。

<思わぬ成功と感謝する>
没落しないで、成功を持続していう方法についても、述べられています。
~~ 成功を思わぬ成功として心から感謝する。
周囲の人たちの助けに感謝し、成果を独り占めしないで人々と分かち合う。
そして謙虚な心を忘れず、更に努力を続けていく。
すると、更なる幸運と成功を手中に収め、長く保持できていく~~と。
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これに関して、稲盛さんは、『書経』(中国の古典)の、次の言葉を引用しています。
「慢は損を招き、謙は益を受く」
