昨日予定したとおり午前中はブラームスを聴いている。引っ張り出してきたのはバイオリンソナタ全3曲。演奏はバイオリンが徳永二男、ピアノは伊藤恵。1996年の録音。
徳永二男は1994年までN響のコンサートマスターであり、多くの演奏をFM・テレビで聴いていた。伊藤恵は1983年ミュンヘン国際音楽コンクールで優勝し記憶に残っている。シューマンのピアノ曲全曲録音で有名。
このCDは発売してすぐに購入したと思う。偶然に仕事の帰りに書店で音楽雑誌を見たら広告が出ていて、その足で買いに行ったと思う。それ以来何回もこのCDを聴いている。
この両者のバイオリンソナタは実にたっぷりと聴かせてくれる。他の演奏と比べてもゆっくり目で演奏時間も長い。バイオリンの高音の透明感と低音部の伸びのある音、ピアノのメリハリのある低音部、バイオリンとピアノの音のバランス、どれも聴きごたえがある。
ひょっとしたらブラームスはこんなたっぷりと聴かせる演奏は想定していなかったかもしれない。ブラームスの生きた当時はかなりバリバリと弾きこなす超絶技巧的な演奏家が多かったと思われる。
しかしそれでもこのようなブラームスのバイオリンとピアノの響きは私の好みに合っている。
第1番は交響曲1番、2番、バイオリン協奏曲を成功して充実した1879年46歳の時のもの。「雨の歌」といわれるのは第3楽章の主題ががブラームス自身の歌曲集「雨の歌」にちなむことによるとのこと。しかしこの「雨」は、日本の梅雨のじめじめとした感じではない。曲全体も明るい雰囲気であり、この3楽章も風が気持ちよく吹き抜けるような感じに聞こえる。
第2番、第3番は交響曲第4番を仕上げたのちのやはり充実した時期のもの。私には明るさとともに憂愁を帯びたいかにもブラームスらしい曲想の第2番と、激しいそして緊張感のある第3番は対になる関係のように聴こえる。聴く場合はいつもこのふたつはペアとして聴いている。人は第3番がもっともすぐれているというけれど、私は2番と3番を同時に聴くことがもっとも好きである。
私はこの3曲は、名手ヨアヒムからの助言(悪く言えば干渉)を受け入れながらバイオリン協奏曲を作った後の、ブラームスが伸び伸びと作ったブラームスらしい要素たっぷりの自信作だと思っている。
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