本日は横浜美術館で「メアリ・カサット展」を見てきた。私は二度目、妻は初めて。雨は夕方に小雨になった程度で辛うじて傘無しで歩ける程度で済んだ。そのために思ったよりは人は多かったが、それでも広い会場、ゆとりをもって見ることが出来た。人気のある作品の前でも人に遮られることなく鑑賞できた。
人物画が圧倒的に多い作品群の中で、本日目についたのはジャポニズムの影響がよくわかる作品群。チラシの裏面にある「沐浴する女性」(1890-91)。画家が46歳ころに作成したドライポイントとソフトグランド・エッチングによる作品。銅版画の技術については幾度説明を聞いてもよくわからないが、銅版画の作品である。たまたま本日の朝日新聞の夕刊に解説が掲載されていた。
私は銅版画という版画によって日本の木版画に近い雰囲気、特に平面的な表現、描線による描写などを取り入れたのだと思う。そして壁と床の藍色に通じるような青と肌の色、洗面台の木の色、壺の肌色に近いクリーム色がかった白い色との対比、布地の褐色、など色彩の取り扱いも似せていると思った。しかし何よりも惹かれたのは、体の曲線と縦縞のスカート様の着物の曲線が一体的に描かれていることに好感を持った。
何気ない曲線に囲まれた人体だが、上半身の淡い肩から腰の線にエロティシズムすら感じる人体の質感と、下半身のスカートの肌合いは実にリアリティがある。ただし、細部を細かく見ると臀部の着物のふくらみが上半身に比べ少し太すぎるとは思うが、作品そのもののマイナス評価ではないと思った。
このような沐浴の構図などは浮世絵からの多大な影響を昇華しようとした結果であるとのこと。そういえば洗面台は遠近法からすれば少しずれてもいる。特に水平線が洗面台だけすべて並行であるが、建物の壁と床の間の線とは平行になっておらず、洗面台が壁にくっついているようでいて左側が少し手前に傾いている。こういうところも浮世絵の影響のひとつなのだろうか。木製の洗面台の量感を大きくし、人体の質感の対比を強調しようとしたように見えた。
後先になったが、展示の概要は
1.画家としての出発
2.印象派との出会い
-1 風景の中の人物
-2 近代都市の女性たち
-3 身づくろいする女性たち
-4 家族と親しい人々
3.新しい表現、新しい女性
-1 ジャポニズム
-2 カサットが影響を受けた日本の美術品
-3 シカゴ万国博と新しい女性像
4.母と子、身近な人々
という配列になっている。
今回の展示では、カサットを印象派に引き寄せたエドガー・ドガ4点、同時代の女性画家エヴァ・ゴンザレス1点、ベルト・モリゾ3点、マリー・ブラックモン1点、同時代の親交のあったカミーユ・ピサロ3点などの作品が並んでいる。またジャポニズムの影響を受けた喜多川歌麿4点、喜多川相説1点、葛飾北斎4点が並んでいる。これらの参考作品が全体112点の内に23点に及ぶ。特にドガ、ベルト・モリゾや歌麿の作品はそのどれもがカサットの作品との関係が窺える。モリゾの作品も興味を惹かれた。