何かフランス映画もイギリス映画とかベルギー映画に似て来たなあというのがまず第一印象。生活感がにじみ出ている。不景気、失業、子育て。何より愛こそすべてと言っていた(と思っていた)フランスの現実感。
貧しいながらも誠実に人生を送ってきたミシェル。組合の委員長をしていながらもリストラのくじ引きの際自分も対象にし、見事くじを当ててしまったミシェル。そんな彼が強盗に会い、犯人がリストラ仲間の元同僚だと知ってから、彼の善人さがこの物語のキーポイントになる。
始めは分からず、何をもたもたそんなこと気にしてるんだろうと、ぼくはむしろこの展開に苛立った。元同僚の言い分を聞いて何やってるの?とか、彼の生活に入り込んでどうするんだろう、とか思ってしまっていた。本当に僕はその他大勢の日和見人間の典型である。
そしてなんとラストでは反対する子供たちを説得し、元同僚の弟たちを養子に迎えるのである。ここまで来ると非道の僕でさえ緩やかな暖かい涙が流れるのを感じるのだ。これは求道の話であると思う。
明日をも知れない無明の毎日を送る一大衆でしかない僕が、映画館の暗い中とはいえ一瞬無償の愛を信じている。これはすごい映画だ。切々とただ誠実な人間の想いを綴っただけの映画だが、実に説得力がある。
これが現代のフランス映画なのだ。下町をズシンと感じるマルセイユの海がいいねえ。人生、一人じゃ生きられないから人はつながりを求めていく。それは探さなくとも身の周りのどこにでもある。じわじわ来る感動作です。
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