昨日見た「マイ・インターン」と同じく、どうってない映画なんだけど、脚本の綿密さ、俳優陣の集中力、演出の鋭さ、それらが一気、たぎるよう煮え燃え盛り、超面白い作品となった。韓国映画の実力をまざまざ見せつける。
話は日本版「張り込み」&名画「第三の男」風である。脚本が光るねえ。しかもチョン・ドヨンの息を飲むのびのびとした演技。この女優は限界といったものを知らないのだねえ。凄い演技でございます。
ドヨン、パク・ソンウン(恐ろしいほどうまい!)に挟まれて肝心のキム・ナムギルのおとり刑事役はいかがなものであろうと少々危惧したが、なんと驚くなかれ、これがあのなよやかなナムギルかと自分の目を疑った演技を展開。彼はこの映画で演技開眼したのではないか。
ラスト。男は女の前に現れ再び女の心をずたずたにする。女は包丁を男の腹に刺す。この時カメラはロングショットになる。まるで二人はいとおしく抱き合っているかのようだ。美しい。舌なめずりするほどだ。
男は女をかばうかのように同僚にことのあったことを告げず、警察車を返す。女を守るためだ。死を意識してか最後のタバコを吸う。体が揺れる。心が揺れる。カメラが揺れる。「くそ女め。」男の女に対する愛の言葉だ。男のもがく顔。映像は急にストップモーション。
ナムギルのセリフの少ない内面演技はなかなか(儲け役だとしても)カッコいい。カッコよ過ぎる(チクショー)。
俳優、スタッフ等みんなが一心不乱に一つになって作ったということがよく分かる作品である。見終わった後の余韻も素晴らしい。ある意味すがすがしい映画である。秀作とはこういう映画のことを言うのであろう。
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