これは何と言えばいいのだろうか、75分、セリフは一切なし。そして殺陣が途切れることなく続く。舞台では御法度とも思える表現方法でありながら、一人の男の人生を丹念につぶさに描き切るその見事さ。いやあ、たまらん。ものすごいデス。
壱劇屋といえば、そりゃあ、あのスタイリッシュな小気味いいアクション、美しさ。もう他の劇団では味わうことのできない高みの次元に位置する。
その売りが、今回は180度回転して、むしろ武骨な人間の愚かで哀しい歴史にまで言及している。死なない男の話である。いや死ねないというべきか。死ねないことの孤独と苦しみ、哀しさを竹村は体現する。
人間の歴史。それを凝縮したそれぞれの人生。人は生まれ、出会い、何かを為し、そして死んでゆく。そんな単純なことが許されない一人の人間。すなわち一人の鬼。
むしろ哲学的だとも思えるそんなテーマを殺陣一つで表現するのだ。演劇からセリフを取ればおのずと役者の表情に観客の視線は行く。竹村はそれを知っている。
ラスト近くは観客のすすり泣きがあの大きな空間にどよめきを与えている。20数名の役者と観客がすり寄い、一つになるその瞬間、、。至福の時間。
こんな劇を作、演出そして主役を演じる竹村さん。ものすごく幸せなひと時ではないだろうか。演劇を志す者がみんなあこがれる劇であったろうと思います。
やったね、竹村さん!
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