ある日朝起きたら二人は夫婦になっていたと認識する。夫婦になるのではなく、もう夫婦になっていたのである。
セックスなどしたからではなく、二人は起きたら横に相方が寝ていて夫婦なんだと思うのである。それから男の兄と女の姉がやってくる。二人は別居中の夫婦である、、。
いわゆるカフカの「変身」を思わせる展開で、これは不条理劇なんだろうなあ。会話は日常的で軽快で安易だが、実は観客は夫婦って何なんだろうと自問することになる。
面白い。実に面白い。自分自身にもいろいろ思い至る部分がある。人生をいくばくか重ねて、歳月を過ごしてゆくとこんな不条理劇が実に親近感のある会話劇に変わってしまう。
男役の出本氏がほとんど最後まで観客に向かって正面を向くことなく終わるのが何故か印象に残る。この夫婦は冒頭から観客に背を向け、そしてラストも同じくして終わる。見事な劇である。4人の演技は完璧。うまい! 出本氏は兄と全く違う少年のようなピュアさを見せる。まさに役者です。
ただ、室内が暑く空調の音が悲鳴を上げていたので、繊細な会話の音声が所々聞こえづらいのが気になった。あれほど観客に接近しているのに、聞こえないのだ。稽古を通して本番で急に音声を上げることは難しいんだろうなあ、、。
いろいろ小劇場を回っているが、この劇場の真夏での公演はいつも酷である。普通の民家を提供しているので雰囲気は出しやすいんだろうけど。
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