ストーリーを辿っていくと重い話になりそうだが、そこはさすが加藤健一、二人芝居でありながらぐっと押さえて渋く、年齢の差を感じさせない絶妙な脚本と相まって、会話も明るく、またピュアで強い作品となった。
ミッチ役の若者が長身でスレンダー。まさに風貌も外国人めいており、てきぱきしてかっこいい。この役者が健一さんの息子さんと聞くから驚いた。見た目からは想像できないほど、お父さんと違い過ぎる。それほど現代的風貌である。(健一さんに失礼かな。)
健一さんは顔が大きく、どちらかというと少々小柄だ。しかし、さすがだね。この重要で大きな役柄に100%入り込んでいる。ALSという難病の患者役を決して暗くさせなく、むしろ突き抜けたほど明るく演じることで、この人生の大きさを体現させている。
死を考えるということはそれだけ生を考えることである。小さな波が砕けてもそれはなくなることではない。大きな海のうねりになるだけだ。等々、この2時間の演劇である意味聖書に書かれていることのすべてが存在するように思えるほどだ。
若い時には押しつけがましいこういうものは好まなかったが、僕もセリフの一言一言が身に沁みて分かるようになってきた。それは年齢を経たという単純なものではない。経験がそうさせたというのでもない。はっきりわからないが、常に何かを考えてきたからなのではないか。(ただの好奇心が強いということだけかもしれないが、、)時間がふんだんにあるとは思えない。限られた時間空間を大事にしたいと思うからである。
健一さんの演技ももうこれ以上のない素晴らしいものであったが、それを受け止める義宗さんの演技も素晴らしく、重圧で軽やかでふとした仕種に人生の哀しみまで感じさせてくれる大きな演技であった。
健一さん、実の息子とこんな素晴らしい舞台で共演、しかも二人舞台。彼の演劇人生でも最大の喜びではないだろうか。
舞台とか観客が完全に一つに溶けたいい舞台でした。
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