こんな感覚の鋭い演劇を見るのはほんと久しぶり。2,3年前「悪い芝居」を1作だけ見、ちょっと相容れない思いがあり、離れていました。でも本作を見て当時のその思いは、何だったんだろう、メチャいいではないか。どちらかというと、今風でない演劇作りに僕はすこぶるうれしいし、それを志向しているのが若い人だというのにさらに感心する。
冒頭のセックスがらみのアッと思うシーンといい、終盤の急に出てくる愛撫シーンといい、驚くものが散見するが、ちょっと言わせてもらえれば、そんなものは演劇を構成するうえではそれほど重要ではない。(面白いが大したことはない)
ラストで女がわめき叫び、徐々に後方のガレージが開いてくる。そうすると暗闇の中で外光十分な外側(現実)が映画スクリーンのように映し出される。道路を歩く市井の人々が四角にはまり、知らず知らず一時の俳優となる。その俳優たちが暗闇でかたずを飲んで潜む僕たち観客を不思議そうに見る。その困惑と快感。
さまよう女は道路に出てしまい再びガレージは少しずつ閉まっていく。そして僕たちの暑い夏のひとときの演劇空間も終了する。
圧倒的だ。その余韻の素晴らしさ。この感覚を恐らく生涯忘れることはないであろう。
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