
さすがです。最近、人間の本来持っている悪について掘り下げる映画作家が少なくなっており、ハネケはその意味で現代では孤高の作家ですなあ。昔はベルイマン、ブニュエル、グリーナウェイ、ギャスパー・ノエなど錚々たる監督がいた、、。
悪と善とは対局ではあるが裏腹にあり、それは人間性そのものであります。人間を探求すると自然とそこに行きつくことになるのは、自然の摂理とも言える。
それにしてもこの映画に出てくる主要登場人物で誰一人まともな人がいないのだ。祖父のジョルジュにしても、妻を安楽死で殺害してるし、孫娘エヴに至っては、実母まで実験動物よろしく殺しちゃう快楽殺人鬼である。
ジョルジュは車椅子生活になって、簡単に自殺などできるはずなのに、人の手を借りて行おうとしている厭な人物である。彼の自殺に駆り立てる動機はやはり妻殺害の記憶が消えないことにあるのだろう。ラストでは、いくら殺人鬼とはいえ、13歳の孫娘の手を借りようとまでするのである。
その点、孫娘エヴは最後は祖父の自殺をブレーキできる自制心が芽生えていたから、多少の光明は見えたかもしれない。まあ、この映画の救いといえばその辺りでしょうか。
この二人がダントツに面白いので、他の面々は悪人だけどそれほどでもないと感じるのは、我々自分自身が持っている悪の染色程度が多少なりとも溶け合っているからなのだろう。彼らを見ていると、まさに現代人すなわち自分自身を見てしまう羽目になるからこの映画は怖い。
え、「私はそんなことないですよ」だって?
今更この荒涼とした現代に生きている人間たち、あなたたち、抜け駆けはできませんよ。あっはっは。
久しぶりに僕の左脳か右脳か知りませんが、がんがん音響が鳴りまくりの映画でした。傑作です。
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