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悲夢 (2008/韓国=日)(キム・ギドク) 75点

2009-02-15 10:38:51 | 映画遍歴
またまた実験作のような夢を通した男と女の世界。全く他人の二人が精神を共有するかのように不可思議な出来事が続く。愛とは、一体全体何なんだろう、、。

オダギリが日本語で、その他の役者がハングル語で会話をしているので最初は戸惑ったがそれもそのうち慣れて来る。俳優たちは相手のセリフを瞬間には理解していないことになる。もうその段階で完全に作家映画である。俳優たちは台本で全体の概要を知るだけなのだろう。セリフは観客のためのものになる。

いつものギドク映画と違い愛というテーマでも今回は情念部分が欠落しているよう思えた。「悪い男」「悪い女」で示されたようなほとばしるような男と女の生身の情念がない。それはセックスシーンでも顕著だ。情念がないから無機質だ。色が全くない。ギドク映画で僕はこんな情念の欠如を初めて体験したように思う。

一つの精神を共有する二人の行き着く先は当然のごとくお互いへの愛があれば眠るときに手錠をしたぐらいでは解消出来ない。やはり一人の精神の抹消すなわち死にまで辿り着く。映画では男も女も死を選ぶことで愛を成就させようとするが、そのラストシーンを見ても無機質だなあと思う。愛はパッショネートなものではなかったか。

この映画は僕にとっては実験作というより習作ではないか、と思う。珍しく構成が図式的で、観念的過ぎる。所々出てくる仏寺も我々にイメージを起こさせるものではない。ギドクはこれからどこに行こうとしているのか。気になる作家である。

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