ある事故が、被害者と加害者を作る。人間の本源に迫る問題作だ。苦しい時間が続くも、最後にかすかな微光が見える、、。
誰にでもどこにでも起こり得る事故だ。万引きで逃げる少女と、追いかけるスーパー店長、少女を引いてしまう女性、さらに巻き込まれるトラック。まさに一瞬にして人生が変わる地獄絵図だ。
少女の父親が被害者であり、しかし加害者ともなって関係者を追い込んでゆく。一番責められるべき父親が実はそれを分かっていながらも、他者を糾弾してゆくそのモンスターぶり。いやあ、古田の役者冥利の演技である。
対して受け側の松坂の、人間が静かに壊れてゆく逆モンスターぶり。迫真の演技。こちらも四つ相撲。
善意の塊のような小モンスター寺島、珍しく普通の役柄の趣里も小気味いい。野村麻純の清楚さも印象に残る。彼女の死によりこの映画のキーが変質し、人間の温かさが充満してくる。
さて、事故とはいえ、いつこういう理不尽なことが起こりうるか誰もが分からない。その時人間は獣にもなり得るし、また本来の、すうーと透けるかのような人間の優しいまなざしにも戻ることもできる。
出口のないストーリーかと思いきや、最後には人間の本来持つほのぼの感を醸し出しつつ映画は終わる。映画的高揚は十分。今年の収穫作である。
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