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悲しみが乾くまで (2008/米=英)(スザンネ・ビア) 60点

2008-04-09 15:08:19 | 映画遍歴
スザンネ・ビア作品は今年で3本目。今までの作品はとにかく出色の出来で、すべてベストテン級の力作だ。ハリウッドに渡り、さてどうか、、。

北欧からハリウッドというのも珍しい。言語も違えば、光、気候も全く違う。だいたい彼女は今まで喪失というものをテーマに大胆に人間を掘り下げてきて、いわばそのオーソドックスさはベルイマン的だと言われてきた作家だ。

しかし、冒頭から何かしっくりしないなあ。何なんだろう。今までは冒頭の5分で一挙ぐっと映像に入っていく自分を感じていたが、今回はそれがない。それどころかラストになっても心の高揚感がないままだ。初めての経験でうろたえる。

夫を急に亡くした若妻と夫の親友である麻薬患者の男との同居、それそのものが何か始めから違和感があり、嘘っぽい。全面的に乗っていけない気持ちをいぶらせながらなお且つストーリーは緩慢に進んでいく。

夫を亡くした喪失感で家庭がばらばらになりかけている女、優秀な弁護士でありながら後遺症に悩む男、それら二人の再生の話なんだが今までの作品と違い説得力というか、観客との心を共有するものがないというか、かなり距離が離れていると感じたのは僕だけだろうか、、。

北欧の澄み切った少々痛い寒風とアメリカの温風との違いが映像に出現してしまったのだろうか、、。脚本を作ることから選ぶことへの相違が今までの作品と全く違えていることも理由に上げられるが、スザンネ・ビアはいわば映画作家に近いところに位置しており、商業演出家のような演出プロであるわけがないと思う。薄っぺらな人間洞察は似つかわしくない。次回作に期待したい。

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