安部公房が書いたかのような不条理劇風であり、ショートショート風のミステリー風でもあり、また何といっても娯楽性が十分満ち満ちている。出演俳優も声といい、華やかさといい、この上ない彼らの個性を引き出している。
ウイングフィールドで、左側の窓が開いているのは実に珍しい。その窓から光が流れ射している。いつも暗闇に親しんでいる舞台はなんだか明るく、ある意味まぶしくもある。それほど常に劇場は自然日光を拒否していたのだ。
しかし、その窓こそこの演劇のキーとなることに気づく、、。
100分近い劇だが、全編にわたりピーンと張った糸の緊張は取れることはない。それは心地よい緊張の持続でもある。
特に、東尾さんの美貌と声がいい。彼女の、ラスト近くのあの窓から見下ろし、落とそうとするれんがは殺気が充満していた。柔らかさ、硬さを交えた演技で彼女の才能は十分発揮された。
対する獲物としての練間は彼の高い格調のある声が(彼は抑制しているのにもかかわらず)舞台にポエムを聞かせるように漂う。いつも、十分な声量に恵まれた俳優だが、今回は何と抑えて、しかしその美声が舞台にとどろきわたっている。
ああ、心地よいなあ。ラストの終わり方も少々ホラーっぽく、娯楽性に満ちている。
完璧な演劇だろう。優れた脚本には優れた演出家と役者が寄り添って来る。いい時間をもらったなあ。これだから演劇はやめられない。
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