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遥かなる勝利へ(ニキータ・ミハルコフ) 80点

2014-01-25 11:11:53 | 映画遍歴

3部作の完結編らしいが、前作は見たはずなのだがほとんど覚えておらぬ。だけどそこはミハルコフ、一編の作品として鑑賞できるストーリー構成を設えている。

カメラがいいね。さすがそこらの映画とは異質のダイナミックな撮り方。唸ります。冒頭の無謀な戦闘シーンにも、一人一人の人間像が深くカメラを通して観客に迫り来る。その基本的な「映画の文法」テクと映画的高揚。最近あまり見たこともない何故か懐かしさまで感じる本格映画を見る感じだ。こういう映画を見ると最近の映画がいかに薄っぺらいものかと思ってしまう。

ロシアの茫洋たる自然と人間像をしかと見ているつもりでも、やはりミハルコフは人間の愛憎劇を根底に置いている。有体に言えばメロドラマでもある。でもロシア文学はトルストイがそうであるように本質的には戦争と恋愛を描いて超長編にしている歴史がある。

戦争という題材に関しては本作で特に新しいものは見受けられないが、それでも指揮官レベルの狂気とは言い難いデタラメ三昧には裏側からの史実の本質を窺うことができる。

コトフと娘の邂逅がラストになって初めて叶うわけだが、だがあのシーンはちょっと作られ過ぎの感は否めないかあと思う。これまでの3部作をこのシーンのみで収束するのはちょい無茶のような気がした。

とはいえ、映画の本流である見事なカット、映像、人間へのあくなき観察力、そこらの映画とは全然違うスケール感を持って観客を圧倒する。ミハルコフはいまだ健在であった。


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