3時間の長尺をじっくりチェーホフで仕上げる芸達者な粋な映画です。原作は読んでいないが、村上とチェーホフがせめぎあっている感じで、最近の日本映画では類を見ない純文学映画(?)を呈していてなかなかイケる。
あまり村上が得意でないのでこの映画にモノ言うには少々おこごましい気もするが、村上のセックス観がどうも少年っぽく、ざわざわ気になるのであります。特にこの作品ではテーマとしては芯となるべきで、この部分が僕には詰まらんでした。
その代わりといっては何ですが、マイカーでずっと語りかけるチェーホフの「ワーニャ叔父さん」の何と素晴らしいこと。昔読んで随分縁遠いが、こんなに人生を確かに語らっていたかと驚きもし、耳をそばだてていたぐらいです。
劇中劇というのは数多くあるが、劇稽古とメイン展開を重ね合わせたものは珍しく、演劇好きの僕だからか、とても興味深く見させていただきました。演劇であれ、映画であれ、何か一つの完成に至る過程は同一であろうと思う。
全体的に、文学的な香りが濃厚な映画ですが、3時間退屈することなく、少々作りごとが前面に出てはいるが、濱口の気負いを十分感じさせる秀作でした。
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