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パブリック・エネミーズ (2009/米)(マイケル・マン) 90点

2009-12-19 10:47:55 | 映画遍歴
冒頭の刑務所脱出劇からスピーデーな演出。カット割りもうまく、映像がうっとりするほど鮮明で美しい。メジャー映画でこれほど洒落た映画も少ないわい、ニヤニヤしながら映像を追う。

まともに撮ればこれぐらいお茶の子さいさいという監督はハリウッドではわんさかいるのだろう。【マイケル・マン】の映像は冴えに冴えわたっている。これが【マン】の映画かと驚いてしまうほどだ。映像派を自認する僕は、この映像に、この演出、であればもう言うことなし。後はどれだけ俳優の魅力が伝わってくるか、である。

世の中、右を向いても左を向いても不況不況、、。こんな世相を感じてこの映画は作られたのだろう。現代を描いて、またまたアウトロー、ジョン・デリンジャーの出番である。

日本人である僕が周知しているぐらいだから、アメリカ人ではもう国民的有名人なのだろう。だから映画では話はそれほど掘り下げられることはない。デリンジャーの人となりも詳しくは説明されることはない。だからアメリカ人と日本人の受け取り方に多少の相違が出るのは仕方がないことなのかもしれない。

話としては運命的な出逢いを果たした【ジョニー・デップ】と【マリオン・コティヤール】のラブストーリーがこの映画の本道である。この出逢い、ちょっとカッコ良すぎる感じもするが、所詮男と女の出逢いって見た目が勝負である。またそれも1,2秒で決まるのである。反対に決別も1,2秒の動作で決まる。そんな、当たり前の一瞬の出逢いを映画は洒落た感じで撮っている。これに多少の精神性が入りこめば大恋愛に成長するのである。

と、まあ、ここで恋愛論をぶっていても仕方がないですね(ゴメンナサイ)、要は男と女って一瞬にだって永遠の愛を獲得することもあるということを言いたかっただけです。(そんなこと分かっているよ、ですって、そうですね、、)

その本道のラブストーリーと対局に描いているのがFBI側の権力側の動きである。本作では敏腕という触れ込みの【クリスチャン・ベール】を配している。彼は(いつも言っているが、)そもそも風貌だけで悩みを背負っているように見える稀有な俳優である。(演技がそうさせているだけなのかもしれないが、、)

今回も、冒頭で鹿を撃つように無慈悲にジョンの仲間を後ろから仕留める。まるで狩りをしているかのような無慈悲な殺戮者の表情。あ、ひょっとしたらいつもとは違うのかなあと期待していたら、その後同僚を殺されたり、ジョンに逃亡されたりとへまばかりし、上司に応援の泣きを入れる始末。またいつもの【クリスチャン・ベール】に戻っている。

彼が演じると狂的な人間もヒューマンな人間に見えてくるから不思議だ。でもこの役は狂人に近い性格付けの方が面白かったのでないか、と僕は思っている。ラストも、自分で殺さず部下に頼っている。しかも、部下から人間的にも信頼を受けていない描写を入れる。【ジョニー・デップ】の最後の伝言まで部下は上司の【クリスチャン・ベール】に伝えないのだ。まあ、だからこそ【ジョニー・デップ】と【マリオン・コティヤール】の愛はラストで完成されるといううまい作りでもあるのだが、、。

そして、エンドロールで【クリスチャン・ベール】はその1年後に自殺したと我々観客に伝える。どうも輻輳した人物だったようである。けれどこの役柄も映画は堀り下げられていないからどうも印象が薄いまま終わってしまう。不満と言えばこの部分だけかなと思う。

でも、2時間強、十分な緊張感を保ったままカッコ良くそして洒落たギャング劇を、素晴らしい映像を武器に【マン】は僕らに見せてくれた。娯楽作でありながら、芸術作品でもあり、なおかつ秀作でもある。十分見ごたえのある作品であった。

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