小津の現存するフィルム、ただ一つ見逃していた作品。やっと見ました。購入してから2,3年は経つだろうか、けれどこれが最後だと思うと見るのが勿体なく、大事にしたい気も出てきて、いつまでも残っていた僕の最後の小津作品でした。
冒頭の運動場での先生と学生との何やら古めかしい、それでいてやんちゃな掛け合いはラスト近くでのカレー屋での合唱に結び付くんですな。うーん、やはりなかなか計算しています。
世界的大恐慌と就職難、大学生がめずらしかった時代、大学生であるからこそ再就職が困難だったなんて、いろいろ当時の社会も勉強させていただきました。バスから見る夫の広告旗を持つ姿で涙する妻の光景は現代との時代の相違を認識する。身分制度はないものの構造そのものは現代より硬化だったのだろう。
ラストの子供二人を交え家族で遊戯をする光景は2,3分のショットだが、どんなモンタージュより映画的であり、濃度も濃い。小津ならではの映像である。
この映画の題材が黒澤の遺作「まあだだよ」に影響を与えていると考えるのは考え過ぎだろうか、、。
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