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パコと魔法の絵本 (2008/日)(中島哲也) 75点

2008-09-25 14:14:40 | 映画遍歴
ええ、そりゃあ驚きますよ。何がって? 日本映画で、絵本の世界がそのまま絵本を繰り広げるように映像で展開していくんですから。そりゃあ、びっくりしますよ。

そう、この映画は日本では珍しい絵本映画なのです。ひょっとしたら恐らく初めてなのかもしれない。こういうものをミュージカルにしちゃうと、どこにでもある映画になってしまうけれど、中島哲也はそこが優秀。きちんと映画の中の映画を絵本仕立てで自由奔放に表現している。

だいたい僕はこういう童心に戻る作品は苦手中の苦手。僕は恐らく子供時代から変にませていて、童心だったことがない変な人間なのだ。そういう人間に童話の世界が、アニメの世界が分かるわけがない。最初見て、これは、と思い、目を瞑っていました。少し目を開けてやはり場違いだと気づき、距離を置いて見ることにしました。

そうすると、不思議にも堅物な僕の心も少々融解し始めて来、この映画の主題なるものを少し感じることが出来ました。それには素直に童話を読むその心根が必要なんです。そこに行き着くことに時間がかかりましたが、でもその時は既にこの映画の終盤に入っていました。

この映画のどんでん返し、それは死のイメージが役所広司に降り注いでいるにも拘らず、いたいけな少女を殺してしまうということでしょう。そうです。この映画はそういう意味で大人のための童話なのです。残酷な童話なんです。ですから、童心になんかならなくても十分見ることが出来たのです。

でも、アンデルセンでも然り、童話というものはほとんど最後は残酷な終わり方をします。少女の死で、生き残った人たちは新たな生を生き始めるのですから、やはり通常の童話の終わりといっていいのかもしれません。

僕には童話を語る資格がないのは既に触れました。でも映画で真正面から組み立て絵本の世界を構築したその技量たるや、並大抵でないものを感じました。また、それを堂々とメジャースクリーンで上映するということ。これも凄いことです。これほど自由な作風を認めてあげる日本映画の将来はひょっとしたら明るい、、?と言えるのでしょうか、、。

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