この日本版題名はそぐわない気もしないではないが、映画の出来は実に素晴らしい。そこには社会から見放され、いつの間にか孤独死を迎えた人たちへの深い敬愛の念が感じられる。
パゾリーニは底辺で生きる、普通に生きていることの本当の人生の意味を再認識させてくれる。
この映画を前にしてストーリーを追うことは賢明ではない。淡々と仕事をこなすメイは孤独死をした人の写真を、自分の部屋に持ち帰りアルバムにしていたということは、すなわち「あなたが生きていたことを忘れない」という思いだったんだろう。
先週見た「悼む人」も同じテーマに見えるが、まるで映画が違う。人との関わり方がこちらの方が深いのだ。それは主人公メイ自身が、孤独死をした人たちと同じ色彩を持っているからなのだろう。
仕事として最後の孤独者の人生を訪ねて歩いて(彼は本当に歩く。歩く。車を使わない。)、アル中風情の二人組に話を聞く。二人は酒を持ってくれば話をしてあげると言う。
メイは酒を買い、二人に渡す。二人は飲んだ酒をそのままメイに渡す。メイは何事もなかったように酒を飲みかわす。三人は同化する。町中の階段での飲み会。見てくれだけでは分からない真実の人間関係がそこにある。
そんな灰色の、無色のメイにもやっと淡い色が出始める。しかし運命は厳しい。神は彼に死を与える。この一連のラストがこの作品の凡庸でないところを表している。うごめく海面のうねりが静かに観客の胸をかき乱す。
あの、一人寂しくこの世を去ったメイ。自己犠牲までして死者たちを見送った彼に、孤独死をした人たちがひとりずつ、そしてそのうち彼の墓標の周りには溢れるほど人たちがたむけに現れる。この感動は「フィールドオブドリーム」以来のものである。
本当に涙が止まらなくなった。忘れ得ぬ映画になることだろう、、。
今最後のシーンを思い出しても涙が出てしまいます。一緒に見た娘は何を思ってくれたでしょうか。
もう10年以上前になりますが、8年ほどイギリスで暮らしていたので、イギリス映画は小道具とか、町の風景とか、ちょっとしたところが気になります。そうそう、こんなのあったなぁなんて。
見逃さずに見ることができてよかったと、心から思える映画でした。セントさんのHPのおかげです。ありがとうございました。
最近いろいろあって、なかなか映画を見ずにおります。
やはり映画って心体の、ある程度一定の時が映画も見れますね。」
この映画の、無償の愛には打たれます。だから主人公も聖人のごとく死を迎えたんでしょうか。考えさせられる映画でしたね。本当にラストシーンは思い出しても今でも涙です。
ひょとしたら今年のベスト1かも。
それでは、また。