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もらとりあむタマ子 (2013/日)(山下敦弘) 80点

2013-12-15 10:08:40 | 映画遍歴

これをもらとりあむというのか、まあ一時休止状態・いわゆるよく言えばタマ子さんの充電状態ですなあ。でも充電は100%になっても充電を続けるわけで決して120%になるわけではない。電源(この映画では居場所)がなくなればどんどん放電していくのだ。

食事も洗濯も男親任せ、ブラジャーなんかも平気で洗わせる女の子である。逆にこんな(いい)女の子は現代においては到底いないのではなんか、なんて僕は思ってしまう。ひょっとしたら性別が男だったらまるで普通の(現実の)現代家庭風景に変貌してしまうが、ここを女の子にしたところが山下のずるいところ、かなんて思ってしまう。

これが男だったら、何のことはない、もう見るに堪えないに寸劇になり果てるが、女の子だから、前田敦子だからそうではなくなる。そうなのだ、こんなもらとりあむタマ子さんは現代における女性の精神性・風俗を一挙抱え込み、誰にでもあるふと立ち止まる時を代表して体現しているのだ。

これほどストーリー的に起伏も少なく、ただ地方の小都市での一年での現代の若者を、描写しつつ飽きさせない演出力というのも現代の山下の充実ぶりを語っている。退屈な日常の中にこそ本当のドラマがある、とでも言ってそうだ。

山下の、(題材的には)原点に帰っていそうで、実は飛行機が着陸すると思ったのにそのまま離陸してしまったかのような爽快感さえ感じる作品である。

彼もいよいよ総合的な職人芸を身につけてきたように思える。次はどんな作品を見せてくれるのだろうか、とても楽しみな作家である。


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