老人映画、最近東西問わずやたら多い。日本人の観客が加齢化しているせいか、それともそもそもそれは世界的な現象なのか分からないが、老いをテーマにし、それは必ずとも深刻ではないという掘り下げ方は見事の一言である。
それにしても出て来るは出て来るは往年の俳優たちよ。カメオ出演っぽい大門正明、 穂積隆信 、島かおり 、長内美那子、白川和子 、正司照枝 、佐々木すみ江。考えればこの映画は往年の俳優大同窓会でもある。それに主な役どころの赤木春恵、宇崎竜童、温水洋一、根岸季衣 を加えればもう完全に平均年齢70歳は下らないのではなかろうか。
それぞれの懐かしい顔を見るだけでも実に見応えがある。昔美貌を誇っていた人はそれなりに面影がある。だからだろうか、認知症という役柄に似つかわしいかどうかは別として、赤木春恵は彼女たちに対抗すべく最後までアイラインとつけまつげでやり通した。この女優根性。タフさ。立派です。スゴイです。彼女ならもう1本ぐらい主役できまっせ。
冒頭にも書いたが、認知症という実際は重い病を明るく深刻にせず人生賛歌を貫いた86歳の森崎東監督は立派だ。映像はさすがで、しかも自然なカットにホッとする。と同時に、長崎のあの延々と続く坂に人生の深淵を見る思いがした。
坂といえば尾道も同じくどこまで行っても坂が続くが、映画の撮影によく使用されるのはそこに滅びゆく日本の美があるからだろう、と思う。
認知症のため、ある意味蔑まされている人たち。けれど立派に彼らが生きてきた人生の重みがひとりひとり存在する。いくら認知症になっていたからといって活動している脳は彼らが実際生きてきた歳月を記憶する。子だくさんで口減らしのために養子に、奉公に、遊郭にそして結婚にと強制された人たち。
そして長崎は日本でのキリスト教のメッカであるにもかかわらず原爆を落とされた悲劇の町である。認知症の彼女の脳裡にはしっかりと庶民から為政者たちへの強烈なメッセージが強く籠められていた。ある意味反戦映画ともいえよう。
眼鏡橋での久々の邂逅に涙を流さない人はいないであろう。どの席でもみんな観客は嗚咽し、声を噛み殺している。
人は生きていく。時間という制約はそれぞれだが、一人一人の人生は美しく哀しい。どの人も歳月を経て一つの到達点にたどり着くのだろうか、、。
思いがけない秀作です。この映画を見られたことを純粋に喜びたいと思います。
最後の一文にセントさんの持つ感受性の豊かさが表れていますね。
この映画、東京の新宿で見たんですよ。大阪ではなかなか見る機会に巡り合えず、掘り出し物でした。
映画って見てみないと分からないですね。
どうしても見たかった「鑑定士と顔のない依頼人」も普通の娯楽映画でしたし、、。
ところで、ブログお邪魔しましたら「ゼロ・グラビティ」絶賛されてましたね。絶対行きます。
「トゥモロー・ワールド」も秀作でしたし、わくわくしています。
それでは、また。