お気に入りの中村義洋作品。そして想像通りのいい出来で、感動。中村は健在。こんなにいいことはない。
題名と予告編から引きこもり少年の陰鬱な話かなあと思ったが、とんでもない、題名から印象付けられる遺書的なものは全くなく、あれは授業の最後で生徒が会釈しながら言い合う「先生さようなら、みなさんさようなら」の一フレーズなのだ。(ぼくはそんなことしなかったけれど、、)
そしてこの少年は小学校の卒業式を境に自分の住んでいる団地から一歩も出ないと決心する。そんな18年の自分史でもあり、団地史(昭和から平成への移り変わり)でもあり、日本の変わりゆく歳月描写でもあるのだ。
上映中固唾も飲まず映像に集中する。中村の映像には人の生きているぬくもりと力がある。観客と映像との距離がどんどん近くなる。しかもふとした人生への渇きもしっとり感もある。映像が生きている。
ラスト近く、伏線だった大山倍達に対応する田中圭たち超ワルがアクション化される。まあ、起承転結的にはうまく整理した感があるも、ちょいと唐突感も、、。連れの二人が少々下手。
でもあれほど団地から下界の出る階段を下りられなかった少年が、母親の危篤を聴きスタコラ何の躊躇もなく駆けだしていくラストの、何と突き抜けたあっけらかんさよ。これが中村なんだよなあ、。驚きと余韻。彼は映画の醍醐味を知っている。
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