冒頭の諸注意のあと、この舞台がほろ苦い物語であると告げられる。年老いた二人の老いらくの恋であることは観客は知っているので、なるほど悲恋なんだなあと脳裏に受け止める。
8月の一月ほどの恋のエピソードが時間を追って区切られ、そのつど舞台の設定も違える至れり尽くせりの舞台づくり。甘美な世界である。セリフも発声もほぼ完成度が高く、気持も十分伝わってくる。
戸田恵子が容貌も美しく、老いらくの恋とは到底思えないほどだ。でもそれは気にならず、これでいい。加藤健一も老人ではあるが、まだまだ老いてはいない容貌で、さすがうまい演技。ふたり、全くケチのつけようがない。
そして舞台は一気に夏の終わり。二人の恋愛の終わりに向かう。(と思っていた)
しかし、思わぬ最後が僕らを待っていた。それはそれでいい終わりだが、それじゃなんでほろ苦い恋と前触れしたのか。やはり劇の前ではストーリーに触れない方がいいのではなかろうか。珠玉のような、まさに全編これぞポエムと言える演劇であったからこそ、その当惑に少々苦しむことになる。
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