冒頭から武器を売ろうとする北鮮、アラブ系の西洋映画風シーン。それが銃撃戦になり逃げる男。どうやら北鮮のスパイが主人公らしい。ハ・ジョンウが引き締まった身体で画面を駆け抜ける。出だし好調。
音響が腹に響くぐらいすごく、サスペンス映画として高揚感が出てくる。カーチェイスのスリリング。はたして裏切り者は妻なのか。
なかなかドツボにはまったような閉塞感と開放感が交互に溢れ、この映画は観客を休めることをしない。ハン・ソッキュが韓国の朴訥な優秀スパイ役を演じ、これもまた懐かしいかな。韓国映画は彼主演の「シュリ」で世界に登場したといわれている。
そして私的ではあるが、私のこの映画の一番のお気に入りは久々のチョン・ジヒョンである。「イルマーレ」「猟奇的な彼女」からもう10数年、彼女も十分人生を知ったような印象である。あごの下も少々ふっくらで僕にとっては見るだけでうれしい限り。青変わらずエレガンスなスタイルを身にまとい、十分美しい。ほれぼれする。
役柄は夫に疑われる北の通訳だが、仕事とはいえ身まで売らされる容赦ない国家に気持ちの置き所がなくなっている。しかも一方では身ごもっているのに肝心の夫からもスパイの疑念を持たれている。セリフは少ないものの印象に残る好演だ。リュ・スンボムの個性的な悪役ぶりも見ものでなかなか楽しい。
舞台がベルリンだからか、韓国映画にしてはロシア、イスラエル、ドイツ、アラブ国など国際的な闇が闊歩してなかなかの重圧感である。2時間のサスペンスを圧倒的な筆力で蠕動する。秀逸な韓国スパイ映画である。
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