90分、ジョージアという見知らぬ国の、神秘に出会う旅を体験した思いがする。映像は恐ろしいほど美しい。音も極端にまで制限し、しばらくは人の声さえ聞こえなかったぐらいだ。
敬虔な思いを心に秘めている人たちはその地で静かに自然と共に生きてゆくことができる。けれども、人間は文明を創り出す。便利を得る代わりに人間本来の大切なものを失ってゆく。行き着く先が現代の我々である。
ザザ・ハルバシは急速に変貌する世界を責めるでもなく、諦めるでもなく、ただただ人間本来が原始的に持ち得ていた水と火、空気、そして何より素直にただただ信じるという人の心を同一に提示することで、人間を見つめ直してゆく作業をする。
ラスト、少女が現実を夢見、あこがれ、恐れ、しかし水とともに溶けてゆくシーンは圧巻だった。あまりに強烈すぎて、しばらくこの映画を忘れることはないだろうと思われる。
単なる寓話を描いた作品ではないのだが、純粋すぎて、世俗に毒された吾輩はこの映画を語る資格を持たないのかもしれない。稀有な作品です。
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