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アルバトロスは羽ばたかない(七河 迦南)(2010 東京創元社) 90点

2011-06-08 13:07:22 | 読書遍歴

本格ミステリーという触れ込み。そしてみんなあっと驚くと言う僕の好きなジャンル。ということでじっくり読ませていただく。

冒頭に事件があり、季節に分かれた4つの小ミステリーが設定されており、いかにも短編を好む作家の味わいが強い。そして底辺を流れる冒頭のミステリーの真相がラストで明かされるわけだが、これが何ともスゴイ方法を採っている。世界のミステリー史上でもこの手はまだなかったのではあるまいか、と思われるほど圧倒的なラストである。

まあアンフェアーといえばクリスティーだって当時そう言われていたし、この小説上のトリックをなかなか言い当てる人はいないでしょう。普通に読んでいて最初の方のミスリードにうまくみんな操られてしまっている。これに気づく読者はほとんどいないだろう。

まあそれだけこのミステリーが上等だということを証明しているわけだが、でも、この方法は活字だからできる芸当であり、映画、テレビでは実現不可能なのである。そういう意味ではトリッキー過ぎるぎりぎりのミステリーを仕掛けたとも言える。

でも何はともあれ、これほどのおぉーと言わせるミステリーは10年に一本出るか出ないかほどの傑作であると思う。僕はこの本をとても高く評価したいと思う。これだけの秀作が昨年、それほど大きく騒がれなかったのも不思議だ。日本のミステリー界はどうなってるの?


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