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パレスチナ1948・NAKBA(ナクバ) (2008/日)(広河隆一) 80点

2008-05-08 13:23:01 | 映画遍歴
ナクバとは大惨事という意味であり、ユダヤのホロコーストと対極的ではあるが同意味でもある、と思う。要するにパレスチナから見たホロコーストである。で、それは1948年のイスラエル建国による領地迫害をいう。

僕もパレスチナ問題については大部分の日本人同様ほとんど無知であります。だが、戦後国連がパレスチナ地域をアラブ人とユダヤ人に分割する案を決議し、その後イスラエルが建国を宣言した後、戦争が勃発し大量のパレスチナ難民が発生したことぐらいは知っていた。

いわゆるよくある民族問題だけでなく、各国列強の政治的思惑がバックにどっかり根を降ろしているのである。だいたい、聖書に書かれていたというだけでこの国はユダヤの国だ、なんていうこと自体がまかり通るなんてあるのだろろうか、と思っていたが、事実そうなのである。これが60年前に実際起きたことなのであります。

映画は60年間に及ぶ中東戦争の詳細を避け、その大惨事(ナクバ)による村の離散状況、当時の生存者を訪ねて証言を聞くことによりナクバの真相に迫ろうとする。広河隆一はあくまで中立的な姿勢で人々を訪ねていく。パレスチナ人だけでなく、ユダヤ人とも話す。押し付けがましいところもなく、静かな対応だ。淡々と人の意見だけを聞いていく。また、その人生を見つめていく。

2時間強、重い映像でもあるが、広河の吐露された朴とつな字幕による彼の心情が60年の長い川の流れを感じ、僕たち現代日本人の胸を打つ。事実を映像で知るだけなのだが、でも、僕は劇映画でないこのドキュメンタリーを見て何が残るだろうか、と自問し始める。

隣の町の陣地争いではないのであります。聖書の中の争いなのであります。宗教こそが原因の大部分なのかも知れないのであります。知らなかった自分も恥ずかしいが、この映画を見てもどうしようもないのであります。決してプロパガンダの映画ではなかったので、余計何も言えないのであります。

そう、宗教の価値観が外国とまるで相違のある日本人にはこの映画を見て、いや見てしまったからこそ、何も述べることは出来ないのではあるまいか。

ただふらりとこの映画を見てしまった僕は反省するべきなのかもしれない。重い映画であるけれども、流してしまえる映画でないこともない。そういうことを考えさせられる映画であるからこの映画を軽々しく見てしまった僕は少々反省すべきだと思っている。

それほど僕を悩ませる映画であります。映画自体は驚くほど秀作であります。

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