「オール・イズ・ロスト」で一人、海に放り出された老人の生きるための闘いを独特の映像で描いたチャンダー。今回は大海原から一転して30年ほど前の少々陰惨な色合いのニューヨークを題材にする。
移民で成功した者たちと底辺にうごめく者たちとの描写が見事だ。少々日本人たる僕には分かりそうで分からない彼らの心情ではあるが、移民もあのイタリー系ではなく、ヒスパニック系である。彼らは今や黒人よりも多いと聞く。
そういえばトラック強盗をされる際中、ラジオから聞こえる音声に「白人が暴挙に走り、黒人を3人殺害し、ヒスパニック系も云々、、」というニュースが聞こえていた。
映像は暗いが、演出はずしんと決まっており、この作品が秀作だというのは見ていてすぐ分かる。題材がオイルの話なのでちと僕には親近感がない。しかも出てくる連中が脛に傷持つ人たちばかりだが、地味目の描写なので少々見る方にはきついものがある。
トラックの強盗シーンが2シーンほどあるが、とてもショッキングで迫力あるものとなっている。強盗犯が逃げるのは分かるが、運転手が犯人を追いかけながらも、途中で犯人と同様逃亡してしまう。最初何が何だか分からず、けれどとても面白いシ-ンであった。チャンダーのうまさが光る。
娯楽性は全くないが、チャンダーの才能を至るところで見出すことのできる作品である。映画ファンは見逃がせない作品だと思うが、一般ファンにはどうなのかなあ、と思ってしまう。(そんなこと大きなお世話かも知れないが、、)
テーマとしては「オール・イズ・ロスト」もこの作品も同じく、人生の「もがき」を描いており、手法違えどチャンダーの大きな視点がよく分かる作品である。
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