いつものナチものでないところがいい。主人公たる英雄も最初は金稼ぎの内職としてユダヤ人をカモにしている。地下に匿われたユダヤ人にも女癖の悪い奴がいて、狭いごろ寝にもかかわらず愛人とセックスをするありさま。
そして生まれた乳飲み子を殺してしまう女など、みんな生きるためには何でもするいわゆるホロコーストものでないところが見ていて救われる。
またこの秘所から収容所に忍び込み連絡をつけ、またぬけぬけと帰ってくる男がいたり、ホントこんなことができるんだろうかと訝る気もあるが、これらはホランド一流の反ナチス、いや反権力姿勢なのである。
当り前の反ナチ映画なんてもう描く気はさらさらない。やるならもっとあくまで明るく、そして実は暗く、けれども人間ってどこまででも生に執着しどろどろしているんだよ、といっぷう突き抜けたような映画を作りたかったんだろうなあと思う。
分かる。分かるけれど、ちょっとひねくれている僕は少々あざといと思う。あの、穴倉で心を擦り減らしながら地獄の生活をするのと、別れた妹がこの穴倉に帰ることを拒んだ収容所と、どちらがいいと言われても僕には分らない。
ただ一点だけ感想を記するとしたら、ソハの嫁さんはド偉く立派です。彼女がいたからこそソハも人間として尊厳を感じその時代を生きたのだろうと思う。悔しいけれど、あまり好きじゃないけれど秀作です。
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