歳月を経て十分にこの映画のランヴァンと同じく齢となった私だが、この作品にそのまま感情移入することは出来なかった。妙齢になりある程度家族という至宝まで手に入れたランヴァン。
彼がこれらすべてを反古に出来るほどの、同志愛というものはいったい全体何なのか、というのが僕の個人的な興味どころだったが、それは僕にはあまり伝わっては来なかった。
なるほど、さくらんぼを盗んだだけで6カ月の禁固刑。それもフランスにも被差別民族という底流が存在するがゆえのことらしい。設定は事実をもとに描かれているんだろうが、彼らが何の心の葛藤もなく犯罪を続けていくくだりには、単なるワルしか思われず、感情移入できないままに少々映像からは距離を置いている自分。
ましてややっと平穏な人生の黄昏を迎える時になって初めて若い時の重大な裏切りに気づくなど(彼だけが執行猶予など、すぐ分かるだろうに)、意外と間抜けなこの主人公に感情移入できる部分が少なくなってしまう。
僕が若い時に見たフィルムノワール映画とはかなり相違があるように思われる。共感できる何かがあって映画は見る人に感動を与えるのだ。そういう意味では少々軽いと思ってしまう作品だった。映画的には水準の出来だろうけれど、、。
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