じっくり映画を見た感があります。演出は当然。そして音楽がすこぶる素晴らしい。ガンガン鳴っている。アンダーソンの本作は、なんと男と女のめくるめく世界を解き明かす。決して新しい素材ではないのに、原点に戻り挑戦しているかのようだ。
いつものむずさが鳴りを潜めている。その分、マザコンで芸術家風だが単なる仕事男に過ぎない男と、いろんな意味で力関係では弱いとされる女との土俵上の闘い、勝負を描く。シンプルである。
我等既婚者からは身につまされる卑近なテーマであるからに、感動というより少々ほぞかゆい。その意味でもアンダーソンはいつもより観客にすり寄った映画作りをしている。
あのキノコ料理の件といい、実際の我等市井の凡人の結婚生活もこの映画と似たようなものであり微笑ましいし、ぞっともする。ある意味おぞましくもあるのだが、それが相手をのり越えようとする愛の行為であるのなら、醜いタッグマッチが立派な愛の形となって昇華される。
ダニエル・デイ・ルイスは相変わらず完ぺきな演技。新妻になるヴィッキー・クリープスは女の社会的地位の高揚をも感じさせる演技を要求されたのだろう、アンダーソンにしぼられしぼられた成果が映像に垣間見える。
女とはかくもたくましい存在であることよ、、。意外なアンダーソンの一面を見せてくれる秀作でございます。
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