前作「ポー川のひかり」はちょっといただけないかなあとも思ったが、今回はしっかりと作ってある。でも、廃教会に難民者がなだれ込み、さあどうするかっていう話、これに近い話を最近映画で見た記憶がある。オルミにとっては自信作なんだろうなあ。
僕が一番感心したのは全編を彩る濃淡を意識した絵画的映像。この色彩はどこから出すんだろう、とても美しくてほれぼれする。映像を見ているだけでゾクゾクする。彼の映画ってこれほどきれいだったっけ?
お話の方はっていうと、これが結構単純なんだよね。司祭と言っても(特にカトリックだから)男性は結婚できません。若かりし時に若い女性のまなざしを見て体がうずいた。信仰者としての神への不安、疑惑を年老いてもまだ持ち続ける司祭。それが信仰というものなのか。
信仰と善行を考えると、善行を優先する。そして司祭は法を犯しても難民者を受け入れる。難民者も多種多彩で、そのありようはこの世の人生図のごった煮でもある。
教会からキリスト像が下され、もはや教会ではなくなったただの廃墟。光が天井のステンドグラスから漏れている。助かると思っていた難民者たちに落とされる爆撃の音。そして神を象徴する天上のステンドグラスさえ割れて舞い落ちてくる。
この世に信仰はあるのか。このまま信仰を続けていっていいのであろうか。信仰よりもっと現実的にしなければいけないことがあるのではないか。
けれど神は沈黙する。この教会が廃墟になると同じく、国はどうなっていくのか。人々の生きる糧は何なんだろうか。人はどこに進んでいくのか、、。
割とありきたりな提示をしてこの映画は終わる。それほど深そうで深くはない。ただただ映像が実に美しかった。それだけでもこの映画は後世に残ると思います。
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