
アニメなんて言ってはいけないほど綿密な絵。それはフィルム映画と全く遜色がないほどだ。集団のシーンでも一人一人、顔の表情が違い、全く劇映画のごとくであります。唸りました。
声も有名スターを脇役に退け、どっぷり画面に浸ることのできたのはさすが宮崎の秀逸で繊細な贈り物だ。最近多いスター声優への余計な入り込みが少なくよかった。宮崎の世界に自然に反応出来た。
出し物はアニメでもきついNHKプロジェクトものなんだよね。よくこの題材を「風」という一つのイマージュで乗り切ったと思う。全編これは風と夢の物語だよね。素晴らしい。音楽と相乗効果でそれはそれは完全に宮崎の世界だ。
けれど、そこにところどころ宮崎の言い訳がちらほら見え隠れするのが僕には気になった。
二郎は美しい飛行機を作りたかっただけだ。それが軍事利用されることは本意ではない、といったような言い訳、、。
ちょっと空々しいのではないか。それが人を殺す兵器であっても、彼は風に乗って夢をはぐくむ人、彼の人生においてはそれはまた別のオブジェではないのか。そんな開き直りも欲しかったのではないか、と僕は思う。
ゼロ戦とは男の子の夢なのである。僕も子供の時、その飛行機が優秀で、確か日本初のプロペラ飛行機YS-11はゼロ戦の後裔機だったという話を聞いたことがある。確かにゼロ戦はヒトを殺戮する戦闘機だったけれど、飛行機の軍事利用は飛行機を愛するひとから男の子の夢・ロマンを奪うものではなかったはずだ。
当時死病と恐れられた結核患者と淡いキスを何回も見せるなど、映画は愛の本質に十分届いていたと思う。ジブリ映画、健在です。全く2時間宮崎の世界に浸りきっていました。秀作です。
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