「十三人の刺客」の稲垣吾郎や「悪の教典」の伊藤英明にはぬんめりした狂気が漂っていたが、藤原竜也にはそれがないねえ。でも考えたらこの厄介どころの単なる異常性愛者は藤原でなく無名の俳優でよかったのではないだろうか、、。
やたら演技をしようとするから浮いてくる。藤原はいつもそうなので仕方ないのだが(舞台ではこの感じが結構映える)、犯人がこれほど内容のない、ただのデクノボウであるのなら彼より警備するSPたちに映像を集中させた方がいい。
この映画の面白いところは、やはり10億円出すと人間はメクラになっちゃうというところ(未遂でも1億円というのが大きい)と、あのデクノボウを公務というしがらみで守らねばならないという精神性の2点だろう。そしてそれだけの映画でもあるのだ。
最近三池崇史は随分大人になって、あの激しいけたたましさも鳴りを潜めている。でも逆にそれだからこそ世の中に注目されてきたわけであって、この変化を彼が一番よく感じているに違いないのだろう。
本当に日本で描くことのできる大アクションエンタメに彼は挑戦している。前半はそれでもなかなか面白い展開で唸らせるところもあった。けれども本当の力量はあの茫洋とした田舎風情での珍道中にあるんだよね。ここがきらりと光るものがなく少々残念。否、本当に残念。まだまだ演出力はイマイチ。
だからこそ藤原竜也がいなければよかったと思うのだ。それか、冒頭で言及した彼の設定を、ぬんめりした狂人にしちゃってもよかったのでは、とも思う。
でもこの作品は全体的に評価に値する出来には達してはいる。
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