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山桜 (2008/日)(篠原哲雄) 75点

2008-06-22 13:13:36 | 映画遍歴
毎度おなじみになってしまった東北の小さな藩下でのつつましい武士の生活と自然との調和を描いた藤沢文学の映画化です。今回は珍しく女の生き方を焦点にした女性映画であります。

山桜。ソメイヨシノとの違いは花と葉が同時に咲く。それだけ地味目ではあるが、華やかさより厳しい寒さに耐えて咲いたりりしさを感じるにはこちらのほうがいいという人も多い。

この映画は女が叔母の墓参りの後に山桜を見て立ち尽くしているシーンが二度出てくる。常に女を遠いところから見ていた男との出会いが満開の山桜であった。次は、男が正義のために刀を抜いてしまい牢内におり、女が金の権化のような夫と離縁させられ何気なくあまりの美しさにつくねんと見続けるのもやはり満開の山桜であった。

この映画の場合男たちはどちらかというと添え物という使い方をされており、まさに女の生き方を考える女性映画となっている。この時代で2度の離婚を経験した女性がまた新しい生き方を模索することは通常は考えられなかったであろう。女も離縁後は静かに余生を過ごそうと思っていたのであります。

叔母のように実家を出て内職で余生をすごそうと思っていた。しかし、その叔母がただ寂しく一生を独身で過ごしたのではなく、愛する人の死を経験し、その人とその後の人生を全うしていた。このことが女を余生でない生き方を考えさせることになる。山桜は女の行き方を決定付けるきっかけになる。

現代女性からすると、環境といい全く違和感が伴うという人もいるのではないかと思われるが、現代においても通じる、何かぬくもりのような暖かいものをこの映画から感じることが出来た。

それはやはり人の生き方というものは、人と人とのつながり、ぬくもりというものを常に求めているものなのであり、それらは時代を超えて行く、、。

婚家の家族、悪徳武士などの描写はあまりに類型的で深みが足りない感もあるが、タッチがとてもやさしく女の視点一つ一つが説得力があり、枯れた咽喉を潤すように爽やかにしみわたります。映画館を出ると人が恋しくなるようないい映画でした。

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