なかなか面白い映画だ。現代の顔ともいえるネットとは何なのか。ただ単にツールだとほざいていると、とんでもない深部に迷い込んでいることの現実をこの映画は教えてくれる。
高校生のベンは孤独で姉にも鬱陶しがられ一人音楽を聴く男の子だった。そのベンが同学校の友人二人に見事ネットを通じて騙されてしまう。自分の恥部を学校内にばらされたベンは自殺未遂を起こす。
執拗で徹底的に悪いと思った友人ジェイソンがさすが自殺未遂を知り暗黒の心が融解してくる。彼もベンと同じく父親との疎遠を感じていた。どの親も恐らく我が子に関しては深い愛の想いを持っているはず。親の心子知らず。その反対もまた真実なり。
僕には父親たちの葛藤も切実に見入ったが、弟の未遂以降の姉の心理状況がかなり興味があった。やはり血縁。家族なんですね。姉のこの態度がこの映画を荒野から救う。
子供を亡くした女。夫は戦争で心が変わってしまった風で、今やネットでかろうじて心の安定を求めている。しかしネット詐欺にかかり財産まで奪われる状況になる。もう冷え切ってしまったと思われたこの夫婦だが、二人の通う道はかすかに残っていた。
やはり心なんだ。ネットを使おうが、みんな心を求めている。これだけは原始人も現代人も変わらないのかもしれない。
ネット風俗店の若い少年。マスコミが彼を救おうと(ビジネス面のほうが本当は強いが)追いかけて来る。少年は女レポーターが言うように将来に不安を抱えている。しかしマスコミに広くこの風俗店の事情が暴露されることにより状況が変わって来る。
マスコミは少年を利用しようとしていただけではないのか。風俗店のオーナーが悪徳者でないことがこの作品の救いである。むしろマスコミの方が金もうけをたくらんでいるのだ。少年は女レポーターの元を離れる。
全体を通して悪人が一人も出て来ない映画だ。そこがこの手の映画では良心的で印象がすこぶる良い。
毎日生活をしている家庭でさえ小心をつなぐものが剥落しかけているのが現代である。それは男女、年齢を問わず現代に生きる人間の宿命とでも言おうか。それでも人間はこの現代に生きる。生きるすべを求めてさらに荒野を徘徊する。
素晴らしい映画である。ネットという現代のツールを題材にした群像劇である。私たちにはとても卑近なテーマなので他人事とは思えない何かがあった。しかし見終わって席を立とうとしたら広い観客席は僕を入れて2人だけであった。ナント、、。
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