昨年の江戸川乱歩賞受賞作品である。これまでの作品群は本格モノが主流だと思っていたが、この作品は完全に倒叙物である。そして、読みやすい文章であることがから一気読みが可能なミステリーある。文章はうまい。
中盤で出現する戸籍謄本を取るための住民票が発行されないという部分が特に強烈な印象を残し、そこから興味深く読み進めることが出来た。このプロットは面白い。この日本国でもそういう聖域があるのだ、と実に納得させられる。
とはいうものの、それほど事件があるはずもない。確かにこの家族あるいは家庭では全員が猟奇殺人鬼一家でもある。でも単にそれだけではないのがこの小説の面白いところである。
ただ、これほど強烈な血の滴る物語であるのに、何故かラストが物足りなく思うのは僕だけだろうか、、。もっとあっと驚く血走ったラストでもよかったであろうにと思うのであるが、、。そこのところは少々残念。
でも水準でありました。これからの江戸川乱歩賞を方向性を定めるにいい作品であると思う。行く道が広がったように思えます。
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