創作する苦しみ、喜び、そして振り返る人生。すべて今まで生きて醸し出してきた自分という世界を、多角的にあらゆる方向から映し出す。その結果、本当の自分を発見する過程を力強く、鋭く描く。
私小説的なものを題材にしながらも、一人の女性としての「生きる」というテーマに大きく捉えている点に深く感心させられた。
これは彼女自身もさることながら、同じ道を歩き続ける劇団員までに生き方を迫る脚本である。それにしても彼女の人生を一つの劇にまとめ、それを彼女自身も含め劇団員に演じさせるという気持ちはどういうものなのだろう、、。
舞台のヘリで佇む彼女の表情をずっと見ていたが、とても真摯な顔をしていましたね。冒頭の「人間失格」そして「走れメロス」のセリフ。彼女が太宰を読んでいるのは分かる。僕も太宰は恥ずかしながら読んでいた。同じく、恥のある人生を送って来たのだから。
彼女の、自分自身を舞台から劇を通して見るという確認作業はスゴイ。その横顔は真剣そのものだ。今回は彼女を芯から見つめた気がしました。それは演劇作家の顔だった。
みほこの姿を女性劇団員全員で演じることにより、めらめらと多彩に投影し、いろんな角度から彼女の人生の光と影を見ることになる。この手法は面白い。そしてだからこそ、その陰影はすこぶる濃いものとなってゆく。
ラストになるにつれ盛り上がる演出だ。太宰に投影させ生きた彼女の人生。その躍動感におののく。劇団員全員によるメロスの語りは感動的だ。
この劇は島原の今までの、一応の集大成ではないだろうか。ここまで彼女の大部分を出されると、彼女はほとんど隠すものがなくなったのではないだろうかと思われるぐらい露出度100%でもある。
勇気が要ったであろう。でも彼女はそれをやり遂げた。やり遂げたからこそ彼女は初めて本物の作家になれたのだと思う。もう彼女に怖いものはないはずだ。
一皮むけた彼女の新しい世界にはとても興味がありますね。
秀作です。島原、やったね!!
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