樋口の魅力を十分伝えた秀作だろう。やはりこの人の作品は人間が書けている。ミステリーでなくとも十分読める作家である。
特にミステリーのジャンルは謎解き、プロットに重点が置かれ、小説の基本である人間そのものを描くことがなおざりにされる傾向にある。そういう意味でも頑張ってほしい作家である。
彼のミステリーは本格からすれば外れてるし、意外な犯人、どんでん返しというミステリーの究極の楽しみは備わっているものの、伏線を読者に提示しているわけでもないから、ある意味ミステリーとしてはアンフェアであるといわれても仕方がない。
でも面白いのだ。どんでん返しも、2回ひねり返すし、最後の最後にまた強烈に上手投げをするから、この読者サービスはたまらない。
でもなんといってもこの小説の登場する人生のもの悲しさがたまらなくいい。樋口の本質的な性向なのかもしれない。
樋口はますます読みたくなる作家である。でもミステリー界では地味な方なんだろうかなあ。ファンも多いとは思うけれど、、。
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