この話は少し前から準備していたが、ちょっとまとめる時間がねえわ・・・と放置してたら、いつ出すの?今でしょ(古い)?な状態になったので、ここで掲載しておこうと思う。
ちなみになぜこの記事を今書くことに決めたのかというと、この拡大戦略が連続するホロライブの卒業・配信活動終了とも密接に関係していると考えるからだ(と下書きを書いている間にもファウナの配信があったり…という状況)。
なお、先に言っておくと、卒業・配信活動終了に関し、私は運営とライバーのどちらか一方の肩を持つつもりはないし、またこの現象を揶揄するような話を書くつもりもない。例えば「配信活動終了」という状態は、復帰の可能性を残している運営側の温情・譲歩のように見えるかもしれないが、細かい契約条項はともかくとしても、「これから連続するライバー離脱のショックを和らげるための方便」ぐらいにしか私は見ていないし、というか湊あくあや沙花叉クロヱのようなやり取りが内部で複数起こっていて、かつ現在進行中なんだろうなという認識でいる(だからそういうカテゴリーが作られた、という訳だ)。なお、所属ライバーの、特に連続する卒業について慎重に対処する必要があるというのは、にじさんじENのセレン龍月にまつわる騒動を見ていれば、当然思いいたる発想なわけで、特段驚くに値しないことだ。
かと言って、ライバーの体調不良や卒業の話=運営批判というのも極めて短絡的であり、そのような立場に与する気は毛頭ない。例えば、業務過多の件は沙花叉に限らず多くのライバーが言及しており、もはや感覚が麻痺してしまっているが、自己判断で量をコントロールできる部分もあり(それがどの程度までかはわからないが)、ゆえに業務過多=断れない仕事をどんどん押し付けているブラック企業・奴隷労働状態、というような解釈はいささか極端すぎる見方だろう。これはラプラス・ダークネスの以下の話が最もフラットでわかりやすいが、
そもそも論として、そういう状況を会社が強制しているのなら、いの一番にその体制から離脱せざるをえなくなるのは(体調を崩しがちだったり配信頻度の低めな)紫咲シオンや百鬼あやめだと考えられ、彼女たちが残っていること自体が、「ある程度は自己判断で調整可能」という話の傍証にもなるだろう。
というわけで、少し前置きが長くなったが、要するにどちらかだけの立場に立ってものを考えても無意味どころか有害であり、よってここでは、まず「ホロライブの新グループのコンセプトとその戦略」という視点でホロライブの拡大路線(言い換えると今置かれた状況)について書いてみたいと思う。
このような運営側の発想を踏まえた上で、次回は大手V卒業者の連続とその後の軌跡による配信者・視聴者の発想の変化を考えていきたい次第だ。
約一年前、ホロライブとは別に音楽を中心としたグループとしてホロライブデバイスのReGLOSS(以下「リグロス」で表記)が結成された。それに引き続き、今度はFLOWGLOW(以下「フロウグロウ」で表記)というグループが作られたわけだが、ここに様々な新しい要素が見られたため、色々ちょっと(主にライバーになりたい人から?)波紋を呼んでいるらしい。
その一つが、すでに「中の人」「前世の活動」が有名な人間を採用する方向に転換したのではないか、というものだ。もっとはっきり言えば、すでに生身のアイドルとして名が売れた人をVtuberとして採用する方針に変わり、これからホロメンになりたい人たちの多くはノーチャンスで、リスナーとしては現実世界の延長みたいなのを見せられる・・・みたいな懸念をしている人もいるって話だ。しかし、これは動画でも言っているように、現時点でそこまで考えるのは早計と思われる(なお、生身のタレントとして有名という点では違うが、ホロEN一期生のグラの演者は元々100万の登録者を抱える配信者であり、このような採用が初めてのものではない、という点にも注意を喚起しておきたい。ただ、フロウグロウは割とあからさまにグループ全体で前世の匂わせを行っており、その点は明らかにそういうものへ興味がある人たちへ訴求する狙いがあることが始めから明白である点は新しいと思われる)。
というのも、リグロスがデビューした際に、ホロライブの新しい方針としてラプラス・ダークネスの話も参考にしつつ記事を書いたが、要はK-POPやダンスの要素を積極的に取り入れようとしており、これが女子高生など若い世代への訴求力を狙ってのブランチ展開&活動というのは容易に想像ができる(だからホロライブ7期生ではなく「リグロス」という別グループなのだ、とも言える)。ちなみに、前掲動画の視聴者に関して、動画主が「うちのホロライブ関連の動画は30~40代の男性が主に見て、にじさんじ関連の動画は20代女性が多い」というアナリティクスの紹介をしているが、まさにこの分布自体が、ホロライブのマス層と同時に訴求しきれていない視聴者層を示しており、ゆえにそれがそのままリグロスのコンセプトの意味するところを暗示している、とも言えるだろう。
とはいえ、それはリグロス全員がそうだという話ではない(というのが、前掲動画の「フロウグロウも全員が元アイドル路線というわけではない」という話や、それを踏まえた役割分担の話とリンクする)。例えば、火威青のイラストが上手いというクリエイター的強みと、「イケメン」のビジュアル(キャラについてはノーコメw)に関しては、いわゆる「腐女子」の層を狙ったものと言えるし、あるいは儒烏風亭らでんの美術の知識やプレゼン力は、「所詮ポップカルチャー」とも見られがちなVtuberが、ハイカルチャーの素養を存分に持ち、さらにそれとサブカルチャーの橋渡しする存在として新たな領域を開拓する、という方向性で採用されたものと思われる(儒烏風亭らでんの活動が、美術館や博物館の訴求力向上であったり、学術系Vtuberとしてリカレント教育などとも相まって今後広がる可能性であったりと、極めて大きな価値を持つであろう、という話は何度も触れてきた。正直なところ、外側からはリグロスが狙った顧客層へのリーチにどの程度成功しているかまではデータを持っていないので明確にはわからないが、儒烏風亭らでんのハイカルチャーにとどまらないコラボの数々は、リグロスの戦略の一端が大いに成功していることは示しているように思える。ちなみにこの「橋渡し」の重要性は、私が批判的に取り上げている現在の古典教育の問題点と極めて深くリンクするのだが、紙幅の問題で今回は割愛する)。
で、なぜリグロスの話をしたのかと言うと、メンバーたちの性質の違いとその後の足跡を見た上でフロウグロウのメンバー構成とその背景を聞けば、彼女たちの「出自」の違いは意図的なもので、そこには戦略性があるという話にそれなりの根拠があると納得しやすくなるのではないか、と思うからだ(当たり前だが、これは動画主の話を全肯定すべきという話ではない)。
そしてそのことを踏まえれば、フロウグロウが、これまでVtuberにあまり興味を抱かなかった人たちを引き込むための「飛び道具」として、リグロスとはまた違う顧客層(J-POPのアイドルファンなど)の開拓を求められていることは容易に理解できるだろう(だから動画でも言われているように、前世の匂わせはむしろ戦略的にやっている、と)。
つまり、リグロスとフロウグロウは同じ音楽グループではあるが、それゆえにお互いで食い合いをしないようコンセプトが明確に違うことが見て取れるのである(喩えて言うなら、松屋が「マイカリー食堂」「松のや」を展開するみたいなもの)。そのことからすれば、この後のグループが、フロウグロウと主要なファン層を取り合うような性質のメンバーで固めるとは考えにくいわけで(松屋が吉野家・すき屋的なものを作っても意味がない)、ゆえにこれからホロライブのライバーとなることを目指す人たちも、現実世界でのアイドル活動といった業績がなければもはや入れない…などと危惧することはないわけだ(まあホロライブオーディションの倍率がアホほど高いのは今さら言うまでもないので、100の可能性のうちの0が0.05になる、みたいな話ではあるが…)。
さて、ここまでが前半である。簡単に言うと、ホロライブの拡大戦略をリグロスとフロウグロウのタレントの性質から見てきたわけだが、この話と卒業・配信活動終了の件は(イコールではないが)密接に関係していると考えられる(ちなみに、ひとりホロライブだけの話ではなく、にじさんじやななしいんくにも関わる事だ)。
以下、次回掲載する動画を先行で出しつつ、一旦この稿を終えることとしたい。
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