灰羽連盟覚書3:灰羽を愛でる存在の異化

2010-12-08 18:00:50 | 灰羽連盟

前回の「灰羽連盟覚書2」で述べたように、灰羽連盟で描かれる実存のあり様がなぜ視聴者に受け入れられたのか、というのが私の根本的な疑問だった。詳しくは前掲の記事を見てほしいが、たとえばその記事の副題にしている「ヤンキー灰羽、則天去私、罪憑き」という(一見するとバランスの悪い)組み合わせが自然にかみ合わさっていることがその一要因であると考えられる。

そういう根本的な話をしてしまったためこれ以上付け加えることは少ないのだが、灰羽の無害化に対する反作用という観点では、後述する「灰羽を無邪気に愛でる存在の異化」がなかなかに興味深い。簡単に言えば、灰羽の人格を認めずまるで小動物のように接する女性に対し、ラッカがあからさまに不快な表情をしているシーンがそれに当たるが、この女性は灰羽に「萌え」たり愛でたりする視聴者と重なっているように私には見える(念のため断わっておくが、灰羽に「萌える」のが邪道だとか不謹慎だとか言いたいわけではない)。残念ながら、このシーンが視聴者に対してどれほどの影響を与えたのか、私にはわからない。そこで脚本集を読み返してみたのだが、「この辺りの絵は、僕のテイストにかなり近い」といったことが脚注に書いてあるだけで、明確な意図をつかむことはかなわかなかった。とはいえ、少なくとも次のようには言えるだろう。すなわち、この女性は前半の雰囲気そのものを象徴しており、この演出によってその場違いさが改めて強調されているのだ、と。

まあそれはさておき、以下は第8~10話の覚書となる。繰り返しになるが、視点や凡例は「灰羽連盟覚書0」を参照のこと。

 

<第8話>

〇「私、自分がどうして灰羽になったかわからない。何も思い出せないままここに来て、何もできないままいつか消えてしまうんだとしたら・・・私に、何の意味があるの?」

〇羽袋を使っているが、本当の目的は違うのでヒカリに対して後ろめたい

〇どうすれば救われるのかわからない→クラモリと同じように振舞おうとするレキ

〇鳥を恐れるラッカ

〇ラッカのくつ・・・寒くねーの?と [視聴者が] 思ったところで古着屋の兄ちゃんがブーツを用意してくれる

〇灰羽に対するカップル [というか女の子] の接し方

親方や古着屋の兄ちゃん、スミカなど含め様々な距離感が描かれていて◎。女の子のそれは灰羽をありがたいモノとして「人格」を認めていない? [小動物に接するみたい→それが無理解として描かれている]

〇生き物の生々しさがない (ex)古い家や草原に虫の一匹も描かれない [一話で気になるところ] →鳥の死骸が際立つ

〇「私はいつも一人ぼっちで、自分がいなくてもだれも悲しんだりしないと思ってた。だから消えてしまいたいと思った。でも、あなたはそばにいてくれた。鳥になって、壁を越えて・・・」

→自殺の本質。「生きていればいいことが・・・」は無意味。「お前が死ぬと悲しい」こそ止めうる。あなたは、あなたの関係者ですか?

 

<第9話>

〇なぜトーガは井戸なんかに来たのん?しかも集団で、雪の降る夜に。

〇ちゃんとクツ脱いでるところが細かい。

〇なぜ [ラッカを] 助けたのか?→完全に不干渉というわけではないらしい

〇なんで話師のじーさんは壁のところにいたのか?

〇「壁を越えた者は外で暮らす準備が整ったと認められた者だ」

〇「罪憑き」って何なんですか?私は罪人なんですか・・・?(「病気」という自己認識からの変化→原罪、スティグマ)

〇「罪の輪」→罪に憑かれる(どちらにしろ罪は在るかのように・・・)。ないと思えば認識しない罪、あると思えばそのまま罪。

〇「杖を返してもらわなければならないからな」→ひねくれも~んw

〇スクーター吹っ飛ばして抱きつくレキ(どれほど心配しているかを表現)

[同時にそこはかとなく感じるオーバーな印象が、実はレキの心の冷めた部分、あるいは白々しさを象徴しているのだ・・・というのはさすがに考えすぎか]

〇話師とのやり取り=内向・静 → 壁の話とスクーター=外向・動

[話師に感謝するラッカに対し、レキはごもっともな指摘をしている。そしてこの客観性が、頭を撫でるなど話師の意外な一面に心動かされていた(=ラッカと近い心情を抱くよう方向付けされていた)視聴者を、内向の世界から現実へと引き戻す]

 

<第10話>

〇クラモリ=無条件で受け入れてくれる人。「クラモリは、ただいてくれたんだ」というレキのセリフを想起。

〇同情ではなく、同じ人の身を案じており、かつそれを具体的行為で示したという事実性がレキとネムを結びつけた

[ネムに受け入れてもらった時のレキの泣き笑いのような表情を含め、ここは灰羽連盟の中でも心動かされるシーンの一つだろう。しかし冷静に見れば、このエピソードはネムの受容の仕方があくまで条件付きであることを示しており、最後の最後でネムが祈るしかなかったという距離感にも繋がってくる。ネムは、自分がクラモリの代わりになれないことをよく理解していたのだ]

〇スクーター吹っ飛ばして寺院へ(緊張感の演出・・・てゆうか気に入ってるわけ?w)

〇「(「巣立ち」に関して)どこが平等だ!クウは一番幼かったのに」

→年齢や灰羽歴が上の方からなら必然。そうではないからこそ、「巣立ち」(の条件)の偶然性が際立つ。


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