「歴史は勝者が作る」実例:テューダー朝のプロパガンダとシェイクスピア

2024-09-24 17:24:26 | 歴史系

 

 

「歴史は勝者が作る」という言葉を聞いても、多くの人は正直あまり心に響かないのではないか。なぜなら、そういう物言いがあまりに人口に膾炙した結果、極めて陳腐化してしまったからだ。

 

しかし一方で、「歴史は勝者が作る」という実例を見せつけられると、我々はしばしばたじろがざるを得ない。なぜなら、自分たちがその「歴史」を真実と錯覚し、その創作と強化へ加担していたことに、嫌が応でも気付かされるからだ。つまり自分たちは、「何もわかってなどいなかった。ただ単に、理解していたと思い込んでいただけなのだ」という事実を突きつけられるのである(テューダー朝にとって都合のよい逸話がブレーンたちによって創作され、それがシェイクスピアという稀代の劇作家によってさらに一般の印象として固定化されていくというプロパガンダの重層的構造をお手本として見せられているようだ)。

 

というわけで、リチャード3世が謀殺した「ことにされてきた」兄弟の物語である。もちろん今後史料批判や新出史料によって、さらに研究が進んでいくことを期待したい。

 

ちなみにヘンリ7世は庶流という都合のいい存在として担ぎ上げられながら、とんでもないやり手でテューダー朝を興したばかりか、星室庁裁判所などを設立して絶対王政の基礎を作ったことはよく知られたところである(そこからヘンリ8世の国王至上法、エリザベス1世の統一法などを経て宗教的自立性を強める中、絶対王政=主権国家体制が形成されていく)。

 

「そうして己の立場をよく理解しているがゆえに権力強化に腐心したテューダー朝の始祖が、政敵(になりうる相手)に対し生半可な態度で臨むはずがない」という前提で考えれば、今回クローズアップされた裏工作についても、至極当然の行動とも言える。

 

ただその裏工作が、目線を変えれば極めて姑息で厭わしいものであったと肌で感じられるようになるというのが(もちろんそれは単なる演出ではなく史料に基づいた一つの説な訳だが)、今回の動画で紹介されたエピソードからの学びではないかとも思うのである、またこれこそ、最近何度か取り上げている「銀河英雄伝説」に関し、それが複数の勢力の視点で書かれているからこそ、一つの事象に対し色々な評価があることを意識しながら読める点で有益と感じる部分の一つであると述べつつ、この稿を終えたい。


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