北横岳ヒュッテあたりからオサバグサが目立ち始めます。高山でオサバグサに会うのは実に15年くらいぶりです。信濃五岳の一つ黒姫山の山頂鞍部で出会って以来のこと。とても懐かしい気がしました。このオサバグサとの最初の出会いが南アルプスの転付峠(でんつくとおげ)付近でした。この時の一人旅は道に迷いやむなくビバーク。さらに真夜中の山行も行い、道なき道を当たりの地形を手掛かりに行動したという今にして思えば無茶の塊のような無謀極まりないものでした。結果地形の読み取りが功を奏して目的地へ辿り着いたのですが、この時に出会ったおびただしい数のオサバグサの群生地に出会い大いに心を癒されたものです。この時以来オサバグサは私にとっては神聖な存在で、「天涯の花」の一つです。
鼻茎は20cm程度。花は純白で4枚の花弁、大きさは1cmくらいで決して大きなものではありませんが、大きなものでは10数輪まとまって花をつけます。針葉樹林帯の被圧植物の少ないところに見られます。南アルプスで見た大群落のようなものは以来一度も見ていませんが、時にまとまって群落を形成しています。
一見シダ植物のような葉をしています。北横岳の個体群は概して貧弱で個体は大きくなく花数も少ない感じがしました。以前はケシ科オサバグサ属として分類されていましたが、ケシ科でなく独立した科として扱われるようになったのでしょうか?
日本産の1属1種の花。大群落を形成するという面を持ちながらあまりひろく普遍的に生育していないようで希な種という扱いです。行きやすい場所として福島県の帝釈山には多いような情報がありますね。しかし、きっと南アルプスの針葉樹林帯には素晴らしい生息地が残っているのだろうと思っています。