今回のカヤノ平の散策は花訪ねる意味合い以上に粘菌という不思議な生き物に出会う旅でもあったのかもしれません。それぞれの種については全く知識はありませんが、粘菌は不思議な生活をする生き物であることは学びました。しかし、フィールドで観察することはほとんどなくその不思議さも薄っぺらいもの。足早に歩いた割には数種の粘菌が目に留まりました。カヤノ平の大径木のブナ林は粘菌の種類が多い場所なのかもしれません。色彩は赤や黄色や白色と多彩でこれだけ見ていても楽しいもの。南方熊楠の話を聞いたときは粘菌の世界に入ろうかとも思った若い頃がありました。この年ではすでに遅いと思いますが機会があれば粘菌の世界をのぞいてみたいものと思っています。
簡単な生活史を振り返るだけで謎はいくつも出てきます。実験室で培養しながらその謎を追求する手法も重要ですが、私はフィールドで粘菌に出会ったときにゆっくりと観察をしながら知識を積み上げていくことにします。
粘菌は動物とも植物とも言えない存在です。もっとも生物を動物と植物に分けようとする考えがそもそも間違えで、どちらにも属さない新たなものがあるのだとかんがえなければいけません。ある時は単細胞のアメーバのような生活をして単独で生きているにもかかわらず、何かの信号で一斉に集まって伸縮する集合体になり動物のように移動でします。そして、それが固着して胞子を作る個体へと変化し多数の胞子を空中に飛散させます。この胞子が地面に落ちて発芽して最初のアメーバのようになるとされます。